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帰ってきた七人「マグニフィセント・セブン」- クロサワ映画と西部劇

世界中からリスペクトされている黒澤明監督。何せ、やっと北野武の40年前に、世界的監督のあかしである金獅子賞を取った。いわば、日本で初めて、世界に通用する英雄としてはばたいた。

その作品がワールドワイドなのは、例えば西部劇。世界的ヒットになった『荒野の用心棒』は、黒澤氏の『用心棒』が元ネタ。しかも、『荒野の用心棒』は、これで「マカロニウエスタン」という新ジャンルを切り開いた。

そして、今回紹介する『荒野の七人』も、彼の『七人の侍』を下敷きにしている。黒澤自身、この日本の大成功を見て、「世界でもイケるんじゃね?」と海外進出を本格的に考え始めた、エポックメイキングな作品でもある。

なぜ、今『荒野の七人』なのか?それは、来る2017年1月、リメイクされて戻ってくるからだ。しかも、原題はそのままの『The Magnificent Seven』、邦題も『マグニフィセント・セブン』となるようだ。
監督は、『トレーニングデイ』『イコライザー』を製作したアントワーン・フークワ監督。そして、その豪華キャスト。
本家『荒野の七人』も、ユル・ブリンナーを始め、スティーブ・マックイーン、チャールズ・ブロンソン、ジェームズ・コバーンと豪華キャストだった。
そして、リメイク版でも、デンゼル・ワシントン。クリス・プラッドと負けてはいられない豪華キャスト。トレーラーを見てみると、スタイリッシュなカット割りから、見せ方。そして派手な爆発と銃撃戦。と、なかなか期待をそそる。

これは是非、映画館で会うしかないだろう。

しかし、『荒野の七人』なのだが。それにつながる『七人の侍』に対して、私の師匠曰く。
「大体『七人の侍』の設定自体、矛盾がある。」
と手厳しい。それは何かと尋ねたら。
「まず。村を襲う野武士があまりにもフリーダムなこと。藩主が絶対黙っていない。『野武士が横行してますよ』ということは、他藩からみて『そこまで国が荒れている』=『絶好の攻め入るチャンス!』ということになる。
時は戦国時代。ヤクザと同じく、藩主もメンツで動いているから、『うちのシマで勝手なことぁ許さん』って気合入っているはずだ。
加えて、農民自体が山賊。『やられる前にやり返せ』って、自警団化してしまった。
奴らの最高の獲物が野武士だ。野武士の鎧や馬、売ったら相当の金になる。加えて逃走資金もたんまり隠してある。例えるならボーナスキャラだ。」
とのこと。
続けてこう言った。
「だから、西部劇のように、舞台を一新したらうまくいったのかもしれない。そんなうるさい設定は無いから。」

ということで、本編の『荒野の七人』を見てみよう。
まず、お決まりの罪のない一般市民大虐殺とかからは始まらない。
ボス格の男が、村の実力者らしい男に、教会を襲ったことから話す。
「金の燭台があると思ってたのに、あるのはブリキの燭台だ。」
信心深い奴がいなくなった、とうそぶく山賊のボス。
激高したボスは、相手につかみかかる。
「俺の手下たちのために、どれだけ稼がなければいけないか、分かっているのか?」
静かな始まり方だが、山賊たちが追い詰められていること。そして、神をも恐れない残虐性を持っていること。次はお前たちだね、という暗示が、さりげなく示されている。
このセンスの良さ!
続きを見ざるを得ない!

また、剣劇をうまく西部劇、つまりガンファイトに変換してある。
志願してきた新米ガンマン。「手を叩いてみろ。」と言って、手を叩かせる。
これにいったいどういう意味が? 怪訝に思いながら手を叩く新米。
「もっと早くだ。」
やけくそで手を叩く彼。しかし、その手の、うち終わらない間に、目にもとまらぬ早業で銃が挟み込まれる。
「西部にはああいう血気盛んな若僧で墓場がいっぱいなんだ。」
観客の方も、「いったい何をしているんだろう。」とシーンに引き込み、あっと言わせるこの演出の妙!
あるいは、ノックされたドア。主人公はもちろん、不用意にドアに立たない。
そして、ドアを開けてみると誰もいない。
そう、ガンファイトの鉄則「不用意にドアに立たない」を実践している。
この辺のリアリティが、にやりとさせられる。

内容も、ビデオ上下巻にわたった大長編の『七人の侍』。
それのいいとこエキスを、ギュッと濃縮したような内容。
展開がテンポよく、それでいて、きちんと七人の書き分けている。
特に、心に残るのが、ハリー・ラックとの掛け合い。
主人公であるクリスが「本当に金は出ない仕事だ。」と何べんも念を押しているのに、実は隠された儲け話があると信じ込む。
途中、初歩的ないかさまを使ったり、お宝があるんだろ?といろいろ村人を嗅ぎまわっていたりするが、全部徒労。
しかし、それでも懲りずに宝を探すところがものすごくいい。
そして、一度は「勝ち目がねぇ。」と戦線離脱した彼。しかし、彼は戻ってきた。
しかし、銃弾に倒れるハリー。
そして、最後のハリーとクリスの掛け合いが涙腺を刺激する。
結局、彼が求めたのは富じゃない。ロマンだったのだ!
ほかにも、本作でしか見られない立ち位置のキャラがいたり、伏線、そして終わり方も、原作『七人の侍』とは違ったりする部分もある。
しかも、こっちのほうがよりハッピーエンドでさわやかささえ漂う。
さすがは、黒澤明が、この映画を見て、主演で発案者のユル・プリンナーに日本刀を送っただけある。
日本の『七人の侍』はもちろん。アメリカの『荒野の七人』
そして今回のリメイク版と、ぜひぜひ並べて観賞していただきたい。

と、なると次に欲しくなるのは、シングルアクションアーミーだろう。真っ先におすすめしたいのは、やはりタナカのピースメーカー。

シリンダーに弾倉とガスタンクを入れる画期的なリボルバーシステム「ペガサス」の第一弾に上げられた機種。その誉に与かっただけの銃である実力を見せてくれる。

西部劇と言ったら、引き金を引きっぱなしで、撃鉄を手のひらでブッ叩いて撃つ「ファニング」という撃ち方が有名。しかし、軟弱なエアガンだと、こんな激しい使い方をしていると、シアなどがすぐにダメになる。しかし、強化策が取られているタナカは、ハードな仕様に耐える。
パワー、精度ともに従来のカート式では考えられなかった性能。しかも、装弾数が10発以上。これはもう、ピースメーカーの皮をかぶった最終兵器。
また、基本的に実銃を模したフレーム・メカニズムを採用しているので、モデルガンのカスタム方法が流用できる。
バリエーションも、アーティラリーからシビリアン。グリップが鳥の頭のような形をしているバーズヘッド。いろんなものがあり、コレクト欲を刺激。
さらに、カスタムパーツも豊富なので、自分だけの一丁が作れる。
実際に、タナカのこれで、サバイバルゲーム・シューティングマッチに出る方もちらほらいる。
骨董銃なので、サイトの照準合わせに癖がある。残念なのは薬莢が出ない。それだけ。
それを補ってあまりある性能。ゲームに。観賞に耐える実力派。
来るべき『荒野の七人』リメイクに備えて、いや、西部劇ファンから初めての方までぜひ一丁は手元に置いておきたい。
トリガーひかずに撃鉄をがちんがちんやる。装填した弾が一発だけなら、シリンダーを回して銃口一歩前のところへっていかにもアナログな楽しみ方ができるのは、これだけ!
この銃を手に取り、そして立て続けに本作を見終わった後には、ピースメーカー以外では満足できなくなること請け合いだ。

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