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昭和レトロ。日活コルトことコルト32オート

コルトM1903。コルト32オートのほうが通りが良いだろうか。かつて、アメリカでM1911に次いで売れた銃だ。
あの銃器設計の天才、ジョン・ブローニングの設計。コルトM1911も、ブローニング1910も、この銃がご先祖様だ。

などという能書きは程々にしよう。初めてここで知った、という方もおられるかもしれない。
何せ、今の流行ではない「中型オート」小さい。それに比例して弾丸も弱い。本当は小粒でもピリリとからい。のに、銀幕ではやはりインパクトが弱い。すっかり大型オートに株を取らてしまった。

007のワルサーPPK/Sではないけど、中型オートが流行ったのは今は昔。しかし、ある世代にとって、「32オート」は特別の意味を持って浮かび上がる。「日活コルト」の名とともに。

石原裕次郎。小林旭。宍戸錠。
彼らを一躍スターダムに押し上げた映画群。
かつて「日活無国籍アクション」と呼ばれた作品たちだ。

1960年あたり、当時絶頂期にあった「マカロニ・ウェスタン」
それを日本でもやれないか? と試行錯誤の末、産声を上げたのは、『ギターを持った渡り鳥』だった。

ギターをしょった渡り鳥。口笛とともに現れ、電光石火の早打ちで群がる敵をバッタバッタと始末する。
「どう考えても日本なのに、「西部劇」なバーがある。」そもそも「日本なのに銃刀法無視で公然と撃ち合いが!」などという野暮な突っ込みはよそう。
西部劇のフォーマットを踏襲した彼ら昭和のスター、文句なしにかっこよかった。
それは『渡り鳥』がシリーズ化され、そしてそれを受けて「無国籍アクション」というガンとしたカテゴリが一時代を築いたことからでもわかる。
そして、彼らの手に輝くのが「日活コルト」だった。

日活コルト

ブローバックもしなければ、薬莢も飛ばない。
ただ、電気着火式の利点を生かした派手で確実なアクションは各地の現場でもてはやされた。
その結果、「日活無国籍アクション」には欠かせない逸品となった。

しかし、この銃がはっきりしない。
「コルト32オート」っぽい。あるいは「45オートとブローニングのいいとこ取りをしたよう」と評されるこれ。
つまり、外見のディティールよりも、「ちゃんと発火する」。それだけのために作られたオリジナルに近いのかもしれない。
しかし、そのプロップガンの一つとして、MGCの32オートが含まれていたのは、言うまでもないだろう。

いまはなきモデルガンメーカー、MGC

当時の「ガンブーム」を支えたMGC。
そのものすごさは、なおかつメーカーがなくなっても、その作品は現役のメーカーによって延々と受け継がれていることからでもわかるだろう。
そして、MGCが当時持てる技術のすべてを注ぎ込んで生まれたのが、32オート。
発火して、さらにブローバックさせるということが試行錯誤の黎明期だった当時。新開発のCP式ブローバックを採用。
キャップ火薬一つで、確実に作動するこれは頼もしかった。
その作動性の高さを見込まれて、映画へのプロップ出演と相成ったわけだ。
だから、これも日活コルトの命脈を引く逸品だといえる。

しかし、マニアの間では不評なところもある。
メカニズムがアレンジされていて、単純明快すぎるものになっている。
おかけで、フレームの中央に、オリジナルにはないピンが付く。
しかも、グリップセフティも効かない。
しかし、それも「間違い探しクイズ」みたいに些細なもの。
コルトM1911の血を引いている「頼もしい」ダンディーさはそのものに。
一回り小ぶりな本体。何せ32口径だ。
スマートにまとめられた本体。ハンマーなど余計なものが出ていないスライド後部。
全体的に、リボルバーライクな曲線で構成されている。
ブローニング1910の優雅さと、M1911のワイルドさ。相反するものが矛盾なくまとめられている。
これは32オート独特のものとしか言えない。

今も生きるMGCの逸品

これがどんなに名作かは、現在でも生産が続けられていることからも証明できる。しかも、マニアをうならせる逸品を作り続けているメーカー、CAWがリリースしている。その名もずばり「MGCリバイバルシリーズ。」

そして、ただのリメイクではない。いろいろうれしい改良がくわえられている。マガジンのキャパシティが一つ増え、本物と同じく八連発になっていること。初期型、中期型など、様々なバリエーションが増えたこと。

もちろん、それに伴い、バレルやブッシング。刻印などが少しずつ変わっているのも見逃せない。また、ダミーだが、ちゃんとグリップセフティも可動するところもうれしい。まさに、かゆいところに手が届く改良だ。

ざっと書いてきたけど、今では「おっさんのノスタルジア」になりかけたコルト32オート。しかし、近年では、『砂ぼうず』などというド直球SFの中にもひょっこり出てきたりしてうれしい。

しかも、主人公の弟子、小砂の愛用拳銃。うれしいキャスティングではないか。で「32口径じゃだめか!」と嘆くセリフも、ガンナッツ的にはツボだ。『砂ぼうず』という作品自体、主人公がウインチェスターM1897。それを皮切りとして、出てくるわ出てくるわノスタルジックな銃の数々。昭和のガンマニア泣かせのラインナップ、必読だ。

昭和のロマンチズムをぎゅっと詰め込んだ32オート。手のひらからはみ出す小ささ。まさに水鉄砲的なジャストサイズは、手にちょうど良い。
昭和のレトロカーのような「相棒感」ここに極まれり!今ではなかなか見られなくなった、小ぶりで小粋な豊潤さを持つ逸品に、心から酔いしれる夜。っていうのも良いのではないだろうか?


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