映画

ワルサー社の現在のハンドガンの主役 – ワルサーP99

1980年代中盤のグロッグの大ヒットによって、軽くて丈夫、なおかつ低コストなポリマー・フレーム・オートが一躍脚光を浴びることとなった。
おかげで、各社一斉にポリマー・フレームの銃を作り出した。P99も、そんなブームの中、産声を上げた。

初めてみた印象は、お世辞にも美しい銃とは言えなかった。それどころか反対だ。

もともと、グロッグでさえ、「子どもが描いたデザイン。」と酷評されるほど、当時の銃のフォルムからかけ離れていた。

長方形の空き箱をぶった切って、拳銃型に切り貼りしたような、あまりにもシンプルなフォルム。
そこには撃鉄も、セフティレバーもなく、ひたすらつるんとした銃側面があるのみだった。

「銃は鉄の塊でなくっちゃならない。」某有名ガンスミスの言葉だが、それでも、グロッグは総段数が17発の装弾数、引き金引くだけで安全装置が解除される便利さ。そしてなにより軽さが受けて、今では、当時へんちくりんなちんちくりんに見えたスタイルも、なんとなくかっこよく見える。
しかし、ワルサーP38、PPKと、魔性の女のような流麗なスタイリング・・・。そう、男のロマンを掻き立てるような銃がワルサーの真骨頂!などと思っていた私は愕然とした。
ワルサーP38を、象に百回押しつぶしてもらったうえ、ローラーで引いてもこうはなるまいというぶっとい銃口、グリップ。
銃口付近が三角形バレルになっていたり、グリップにもP38っぽい丸みを持たせてあったりする・・・のだが、やはりとってつけたような「美」のように感じてしまう。

現に、実銃、ワルサーP99も、当初は苦戦したようだ。
というのは、あんまりにワルサーP38、そしてPPKという銃の完成度が高すぎたせいで、まるでワーゲン・ビートルのあと、暫くヒットが出なかったフォルクスワーゲンの如く、このP99も人気がなかった。
しかし、世界一有名なスパイ。ジェームズ・ボンド。ピアース・ブロスナンで、PPKからP99に変えたことを皮切りに、『24』のコンロン、『X-MEN』の兵士、などで、ちらほらと見かけるようになってきた。

そして、P38にこだわっていたルパンまで、一時期、その後継機種であるP99に乗り換えたのだった。
メディアの露出とともに、少しずつP99という銃はメジャーになってきて、その近未来的フォルムから、今や、主役格、雑魚格まで「いつの間にかそこに握られていた。」という名わき役っぷりを発揮している。

で、P99のトイガンなら、やっぱり決定的なのは、マルゼンのP99だろう。

もちろん、ガスブローバックで元気よくスライドが動く、実銃の機能、そして分解方法まで再現されている。と、ガンマニアにとっては、感涙物の再現だ。

例えば、スライドを見ていくと、なるほど、グロッグにはないような色気がある。グロッグが本当にプラの箱、という感じに比べ、三角形の銃身、スライドの背中に走る、乱反射止めの溝。そして、スライド後部右に属する、デコッキング・ボタン。と。
そう、このデコッキング・ボタンも、この銃の大きな特徴となっている。

前述したワルサーP38、そして今も製造され続けているM1911と比べ、これらポリマー・フレーム・オートは、外に撃鉄が露出してない。
一度撃鉄を上げた銃というのは、トリガーが軽くなっているので、いつどんな衝撃でトリガーに力が入るかわからない。だから、トリガーを引きつつ、撃鉄を指で押さえながら、ゆっくり戻す(本当は危ないので非推奨)というやり方ができない。
だから、このボタンを押すと、暴発もせず、安全に撃鉄を落とすことができる。

普通のダブルアクションオートなら、安全装置を兼ねたデコッキングレバーがあり、それで撃鉄を落とすのだが、この手のポリマー・フレーム・オートは、引き金にしか安全装置がない。
それが、リボルバーと同じ感覚・・・つまり抜きざまに安全装置を解除しなくてすむ・・・で撃てる理由で、大ヒットした一因だけど、だからこのようなボタン形式になっている。
また、撃鉄を起こしていると、スライド後部から赤く塗られた撃鉄の頭がにょっきり出てくるのも、実銃通りの心憎い演出。
これで、撃鉄が見えないP99も、今撃鉄が上がってるのか寝ているのか一発でわかる、という寸法だ。
で、セフティは、トリガー後方に切られた溝がある。これじゃイマイチ不安というので、もう一つ「ロングストロークシングルアクション」と言うものも再現されている。

説明しよう。

普通、銃と言うのは、撃鉄が上がると、トリガーが後ろへ下がる。その分だけ引きしろが短くなり、不安定な状態になる。
しかし、P99には、撃鉄を起こした状態のまま、トリガーを再び前進させる・・・。つまり、引きしろを再び長くする工夫が凝らされている。
これが「ロングストロークアクション」であり、スライドを少しばかり後ろへ下げてやると、自動的にトリガーは元の位置に戻る。
また、ダブルアクションオートは、撃鉄を落とすだけで安全装置の代理とすることもできる。引きしろが長くなるうえに、一キロ近い力が撃鉄を抑えるからだ。

しかし、このP99の「ロングストロークシングルアクション」を使えば、引きしろが長いまま、撃鉄を起こした状態のトリガーの軽さで、引き金が引ける。
ダブルアクションとシングルアクションの、いいとこどりをしたようなトリガー・メカニズムは、さすが独創性のある機械を作るドイツ!
また、指に合わせた凸凹、そしてバギーのタイヤのような滑り止めが飾られるグリップは、見ていて面白い。さらに、後部のバックストラップという部品が交換できる。つまり、グリップ幅を、ユーザーの手に合わせて調整できる。
という具合に、文句なしの出来栄え。

マルゼンP99だが、それもそのはず。
単なるエアソフトガンという位置づけではなく、本家ワルサー社から、「ジャパニーズP99」のバリエーションとしてのお墨付きをもらっている。この気合の入りっぷりは、ただものじゃない。
私としては、その小型バージョンのP99Cも一押しする。P99より一回り短いので、取り回しがいい。何より、スライドストップが右側でも左側でも操作できる。かわいい相棒だ。

また、深夜、ガンアクション映画に身をゆだね、片手にビール、片手に銃で究極のバーチャル体験を!と考える方にも、マルゼンP99はおすすめ。
前述したように、グロッグばりにスクリーンに登場し始めてるP99。
有名どころだと、『ルパン三世Y』でルパンが、『カウボーイ・ビバップ』で、ジェット・ブラック。『NOIR』ではミレーユと、主役級はってるし、それ以外にも、チョイ役で出てくるのを含めると、星の数ほどあるだろう。
今、メディアで出てきてるような銃が欲しい。だけど、グロッグは味気なさ過ぎて浸食気味・・・という方は、ぜひともお供にしてほしい。