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36年ぶりの華麗な復活!ルパン三世ゲームブック『さらば愛しきハリウッド』復刻盤

次元大介の声も大塚氏に代わり、ミステリ風味の味付けも冴えに冴えている、『ルパン三世 PART6』
それに続くように、うれしいお知らせが。

ルパン三世ゲームブックシリーズ。栄えある一番初めの「The First」
『さらば愛しいハリウッド』
復刻版になって、ここに登場。

かつて子ども世代の遊戯世界に君臨していたゲームブック。
まだ、ファミコンもそんなに普及していない時代「物語で遊ぶ」メディア。
それが「ゲームブック」だった。

その中で「ファミコン」はてまた「オリジナル」ゲームブックを次々に生み出す双葉社は、ヒーローだった。

「人気のあるものは、すべてゲームブックにしてやろう」
「ルパン三世」がゲームブックになったのも、必然と言えよう。

今回、復刻されたものだが、ただ「ゲームブック」のみ遊べるというものではない。
豊富な付録がうれしい!
ページをめくると、目に飛び込んでくるのは「ゲームブックの遊び方」
「ゲームブックとは何ぞや」から始まり、「遊び方のハウツー」しかも裏技まで。そして歴史について触れた小解説が飛び込んでくる。
初めてゲームブックに触れる方でも、安心な仕様になっている。

そして本編。

『ルパン! ゴーズ! ハリウッド!』

いつものルパン節ではない、次元のナレートから始まるのが、新鮮!
ルパン曰く、「一パーセントの思い出と、九十九パーセントの気まぐれから始まった旅だった」
だったはずだけど、冒頭から始まるカーチェイス!
しかも、こっちの車は、「高性能の日本車を進めてくれたディーラーを怒らせてまで求めた」サンダーバードってんだから、ここで「ルパン」=「多彩な車」ってツボを突いてる!

今回の冒険の目的は、ハリウッドに眠る一本のフィルム。
無名の監督、無名のキャストが撮った、本当に何の変哲もないとしかいいようがないフィルムだが……。
ルパンは、それを痛烈に欲しかった!

大阪城に超絶C級ニンジャアクション!
ルパンらしい派手なアクションの中で、フィルムの秘密。
そして、それをめぐる大仕掛けな陰謀が展開していくのは、ルパンティック真骨頂。
さすがは、大ヒットノベル『無責任艦長タイラー』を仕掛けた大御所、吉岡 平先生。
「斬鉄剣の意外な弱点」「ルパンの最大の弱点」そして「ファーストシリーズ」のエピソードがさりげなくしっかり絡んでくるところ、実にうまい!

そして、『ルパン』といえば「銃器」。本書にも、魅力的な銃が大量だ。
ボンドのかつての愛銃、ベレッタM1943とか、世界一強力なリボルバー・カスール454。
対戦車ライフルであるモーゼルM1918。
84ミリ無反動砲M2-550カール・グスタフ。
そして、ひそかに物語のキモとなる九十四年式自動拳銃!
ボディ・アーマーを楽々貫通する「コップ・キラー」KTW弾。
蛇の頭を吹き飛ばす専用散弾など、「ハードボイルドなら、酒と煙草と銃!」とニヤリとなる、銃の個性を生かした細かい描写が炸裂している!

そして、初心者にうれしいのが、たとえゲームオーバーになっても、再チャレンジのパラグラフがきっちりと表示され、回収するべきアイテムがあるパラグラフさえ表示される。 
なるべくリプレイしやすい状況がととのっているというわけだ!
読者のゲームブック歴の輝かしい最初のプレイとなるべく、その中でなるべく苦痛となる作業は避けたい! という気合があふれているよね 
これぞルパン! というエキサイティングなストーリーで攻める本編!
輝ける第一作にふさわしい。

だけど、お楽しみはそれだけじゃない。
巻末にひかえるは「資料編」として「ゲームブックの歴史」と「ゲームブックの作り方」
まずはゲームブックの歴史。これが、短いながらツボを突いた解説がぎゅっと詰まっている。

『火吹き山の魔法使い』が生まれた背景のTRPGにも触れつつ、それら外国産ゲームブックの国内紹介に多大な功績を残した安田均先生などなど、多彩な資料が短い中にもフルにぎゅっと詰まっている
1980-85年代に出された代表的ゲームブックのリストの中には、学研の『きみならどうする?』シリーズから、児童向けの『にゃんたんのゲームブック』。
もしかすると、あなたが幼少のときに冒険をした舞台があるかもしれない。
そして、『バック・トゥ・ザ・フューチャーなど』の映画とのメディアミックス。そしてTVゲームとの関連を詳細に記しながら、衰退まで書かれている。
なにせ、双葉社のゲームブックと言えば、やはり『ファミコン冒険ゲームブック』
高値の華なゲームソフトの代わりに、これらの本で冒険を十分に堪能した子どもも多かったかもしれない。
手軽に手を出せるゲームブックは、まさに救世主だった。
 
加えて、『双葉社のゲームブックシリーズ』が、どのように作られていたのか。
その技術が、実際に「ルパンゲームブック」を支えた塩田先生の視点も加えて公開。
カードを使った、フローチャートの作り方などから始まり、具体的な作成方法は何かの参考になるかもしれない。
このような、マイルストーン的作品を深く掘り下げた付録まで付くとは!

「ゲームブック」の黄金期を過ごした方には懐かしい。
「ルパン三世」の枠にとどまらず、資料としても、より深く掘り下げることが出来る一冊。
初めて手に取る方にも、懇切丁寧な対応がうれしい。
双葉社のゲームブックスピリットがぎゅっとこの一冊に詰まっている。
ぜひ、あなたの本棚に!