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不滅のリボルバー S&W M10

「永遠の名銃とは何か? 」

その問いに対して、こう答える方は多いのではないだろうか。

コルトM1911

コルト45オート。ガバメントなど、様々な通り名を受けるかの銃。しかも、いまなお進化を続けている。文字通りに1911年に世に出て今や一世紀になっても、絶賛を受けている。それは、天才銃器デザイナー、ジョン・ブローニングのコンセプトが偉大なのかもしれないい。あるいは、「人を殺す」ということは、そんな単純なものでもできる、いわば「人の命のあっけなさ」を物語っているのかもしれない。

しかし、それ以上に長寿を誇る銃。偉大さの陰に隠れているが、やはりこの銃を出さないわけにはいかない。

S&W M10。

M10という銃は、なんのけれんみもない銃。六連発で、引き金を引いたら弾が出る。リボルバーそのものの銃だ。この飾り気ないところは、M1911と似通っている。
だが、この銃は、1899年から「ハンドエジェクター」として誕生。数々の改良を加えて、今でもS&W社のカタログから落ちることがない。すべての近代リボルバーは、これをお手本にして作られたと言っても過言ではない。

繰り返すが、M10という銃は、派手な要素は何もない。ほっそりとしたバレル。横にマグナムが並べられると、いかにも華奢だ。
調整可能な照準器がついているわけでもない。
オーバーなグリップがついているわけでもない。

実に地味な銃。マグナム。そしてM1911に比べても「貧弱」な印象を受ける。実際に、「ミリタリー&ポリス」のあだ名の通り、軍用としても作られたこの銃。極度に興奮している、麻薬中毒などで痛覚がトンでいる敵に対しては、「何発撃っても効かない」状態になることもある。そこで「一発で人間を仕留められる」大口径M1911の採用と相成ったわけだ。

しかし、そんな状態に陥るケースは限られている。弾頭、弾薬の改良によって、対人用としては38スペシャルで十分。まるで、M10がその「ほど良さ」を武器に世界中に採用されていったがごとく、38スペシャル弾も、「9mmパラベラム」のように、最もポピュラーな弾薬になった。

改めて、M10を手に取る。

Kフレームの大きさは、大きすぎず小さすぎず、すっぽりと誰の手にも収まる。加えてこの大きさは、同社のM36よりも反動が抑えられやすい。細いパレル、フレームも、まるで手の延長のようにすんなり取り回しできる。携帯性にも優れている。S&W社の近代リボルバーは、Kフレームから始まったのも納得。
世界の警察、そして日本の警察でさえこれを採用。あるいは、ミリタリー&ポリスの名前のごとく、ベトナム戦争では、作動不良を嫌った兵士たちが自腹でこれを買い込んでいった話は有名だ。これ以上ありえない地味さに、いぶし銀の魅力を感じるようになったら、あなたも一人前のガンナッツだ。

そんな歴史ある銃だから、当然少しずつバリエーションも違ってくる。
で。初期に近いオールドモデルから、戦後モデルまで、トイガン化されているのがいい。特に、現役で手に入るもので、オールドモデルと言ったら、ハートフォードというメーカーの独壇場だ。今ではお目にかかれない旧式モデル。「ファイブ・スクリュー・モデル」を再現。これは、フレームのねじ配置が五つになっていることからついたあだ名。他にも、背の高い撃鉄。丸っこいサムピースなどが、なんとも言えないレトロ感を演出!スナブノーズの定番、2インチ。

M10のデフォルトな4インチ。

そしてランヤードまで再現された軍用「ビクトリーモデル」これには、4インチと5インチがラインナップ。
禁酒法時代、ギャングと警察の戦いを描いた作品には、通行人Aばりに頻出する。
定番の映画『アンタッチャブル』から、最近のノワールもの『91Days』まで、主役級の手に握られているのが、嬉しい。

この時代はトンプソン軽機関銃と、M1911メインなのはわかる。しかし、こういうアナログなド定番が活躍しているのを見ると、ほっとする。

そして、戦後モデルは、なんといってもコクサイだろう。スナブノーズの2インチから、FBIスペシャルの名を冠す3インチ。そして定番の4インチまで各サイズがそろっている。

特に3インチ。「4インチだとかさばりすぎる。2インチだとエジェクターロッドが短すぎて確実な排莢ができない。」ということで、FBIが特注。4インチの間延びさもなく、2インチより頼もしい太いバレルは、バランスがいい。特に、映画『羊たちの沈黙』のラスト。

ヒロインである、FBI訓練生クラリス・パターソン。暗闇での危険との対峙に抜き放たれたこれ。小型なのに、マグナムのような緊張感が走った。
また2インチバージョンは、伝説的刑事ドラマ、劇場版『さらば あぶない刑事』にて、セクシー大下の相棒を務めていた。

また、漫画『砂ぼうず』でも、主人公、砂ぼうずのサイドアームがこれだ。

近未来SFなのにアナログなこれが、無法地帯なカオスの世界観演出に一役買っている。禁酒法時代からSFまで、実は結構な数が握られているM10。ガスガンとしては、戦後型のM10を、タナカがモデルアップしている。

3インチのものは、357マグナムが撃てるM13にアップデート。

しかも、クラシカルな雰囲気抜群の4インチも抑えているのがうれしい。

M1911よりも歴史が古いリボルバー。そのクラシカルなベーシック・オブ・ベーシックな魅力を、ぜひ手に取って確かめていただきたい。


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