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ワルサーPPK/S – ワルサー社のもう一つの雄

ワルサー社のもう一つの雄、ワルサーPPK/S。

PPK/Sというのは、PPKのグリップを伸ばしたもので・・・そもそも、近代ダブルアクションオートの祖になるPPシリーズの末裔・・・。などど野暮な説明をするのはなしにしよう。

世界一有名なスパイ、ジェームズ・ボンド氏の愛銃で、おかけでワルサー社も現在まで生産を続けてる。PPK/Sの偉大さを語るには、これだけでいいだろう。
P38はとっくに、カタログおちしてるというのに・・・。

ベルサイユ条約で大打撃を負ったドイツ。これは再軍備しなければ!とヒトラーの命を受けて、1929年に作られた銃がワルサーPP。

これが本当に優秀だった。P38のメカはこのコピー、また、ほとんどの中型オートはこれのコピー。そして、PPをちょっと取り回しをよくしよう、という事で銃身とグリップをカットダウンしたのがPPK。

これが隠し持つのに最適だった。弾は.380ACPだが、護身用で、作動は確実、命中精度もそこそこ。というわけで、各国の警察、私服刑事が使い出した。

このヒットに気をよくしたワルサー社。銃の帝国、アメリカに売ったら大ヒットするだろう、と輸出しようとした。
しかし、そこで、グリップの短さが引っかかった。
ケネディ暗殺のあおりを受けて、あんまり小さい拳銃は持ってはいけない。暗殺にぴったりだから。という法律ができたのだ。

そこで、ワルサー社はPPKの短銃身と、フルサイズのPPのグリップを組み合わせた。
結果として、グリップが延長されたが、これが寸詰まりのPPKと比べ、実に握りやすい。という訳でこれまた大ヒットした。
ボンドの愛銃になれたというとこからも、PPK/Sの知名度はわかると思う。

ただ・・・。ボンドを一躍有名にした第一作の、『ドクター・ノオ』。25口径のベレッタを見て、「婦人用の銃ですな。」と言って鼻で笑われ、そして上司のMから、「007は殺しのライセンスだ。殺されるライセンスじゃない。」と言って、PPKを渡される。が、このシーンで使われたのは、ベレッタの25口径などという貧弱なものではなく、ベレッタM1934。PPKとためを張るくらいの名銃。

つまり、原作者、および映画スタッフの無知から、このシーンだけで「M1934よりPPKの方が上」ってレッテルを張られたわけだ。
たしかにM1934にも、薬莢が顔や胸元に飛んでくる可能性もある、マガジンが抜きがたい、って弱点もあるが、それでも丈夫さなんかはPPKより上かもしれない。

これでM1934を抑えPPKの売り上げが大きくあがったそうだ。
後日、イヤミとして、ベレッタはボンド役にベレッタがM1934の記念モデルを送ったとも言われるが、さて、そんな噂もさもありなん。
いや、ベレッタM1934も、ベレッタM92Fをスケールダウンしたような流麗なデザインが売り。不死身の伊達男には、お似合いのガジェットだと思う。

ボンドの大ヒット時には、PPKのモデルガンが飛ぶように売れたのは、火を見るよりあきらか・・・。

しかし、時代は変わり、いまじゃエアソフトガン全盛の時期になった。
エアガン・・・ガスの力に頼らないPPKもどきなら、実は現役で売ってる。
しかも、あの超優等生、マルイの最新作で、その名も、『銀ダンエアガン ポリス ピストル SS』

これのものすごいところは、その卓越した命中精度と、トリガーシステム。
ふつう、エアガンを撃つのなら、コッキングという銃内のポンプをセットする動作がいるのだが、これはトリガーのみでポンプ圧縮をするんで、ガスガンと同じフィーリングで連射できる。
マルイ自体、「進化した銀玉鉄砲」というコンセプトで作ったんだけど、つい引き金に指が行っちゃって、パンパン空撃ちする、あの感覚。
また、そういう小さい子どもが振り回しても安全なように、威力はかなり低く、服越しではあたったことすらわからない。

ただ、それに反比例して、かなりあたる。5mのインドアなら、すーっと狙った点に弾が吸い込まれていくのを見て「これはマジックだ! 」と仰天するだろう。
弱点は、「ワルサー」と名乗ってないだけあって、モデルガンやガスガンに比べると、外見のリアルさで一歩劣る。専用の弾がないと、自慢の命中精度を発揮できない、などということ。
しかし、値段1000円ほどで、この奇跡のような性能と、そこそこ見栄えがするPPKが手に入るのは、ありがたい!

ガスガンなら、今やマルシンのPPKか、マルゼンのPPK/Sしか手に入らなくなっている。

マルシンのPPKは、シークレットエージェントシリーズとして売られ、着脱式サイレンサー付属で、4500円ほど。
ただし、スライドは激発によって動かない固定スライド。
とはいえ、ガスの気化し難い冬場には安定した作動をする。
PPK/Sじゃねぇんだよ!グリップの短いPPKがイんだよ!とかたくなに主張する貴方には、これしか選択肢がない。

しかし、ひるがえってマルゼンPPK/Sも、値段は一万近いが、オプションでサイレンサーがつけられる。
作動も、固定スライドに比べれば劣るが、かなり安定した作動をするし、命中精度もいい。もともと、マルゼンはPPK/Sを少しずつモデルチェンジして作ってきた、いわばPPK/Sの肝いり。
サバイバルゲームで、かなり信頼できる中型オートだ。何よりも小気味よいブローバックが味わえる。

分解手順もほぼ本物を模してあるし、なんと、弾を抜いて反動だけ味わえるモードに切り替えられる。普通だと、スライドストップが自動でかかってしまい、空撃ち一発でスライドが止まる。これを解除するためには、いちいちマガジンを抜く必要がある。
で、その手間を省き、例えばDVDで、主人公の発砲とともに、自分も連射できる。なんというバーチャル・リアリティ。
だから、マルゼンのPPK/Sを買っておけば間違いない。

私はPPK/Sのデザインが好ではなかった。完璧すぎる。ギリシャ彫刻にエロさを感じないように、直線、そして絶妙にほんの少しカーブを取り入れたシンプルだから美しいデザインは、あまりにもカッコつけすぎな気がした。
しかし、友人から、動くPPK/Sを見せられ、自分の手でマルゼンPPK/Sを握ってみて、感想は変わった。いい! 手にしっくりくるグリップと言い、引きやすいスライド、自然な形で、指がそこに置かれるマガジン解除ボタン。セフティ。トリガー。

買ったばかりなのに、古くからの友人に思えてくる。
なるほど、WWⅡの中で作られたドイツ銃器は、何やら魔力があるというのもうなずける。
それに、第二次世界大戦を描いた映画にはもちろん、日本の刑事ドラマにも出てくるというのもうれしい。
なんせ日本警察さえ採用したんだから。

というわけで、マルゼンPPK/S。この新しくて古い友人を、あなたのお手元に一つ置いておくことをおすすめする。