Cz75伝説の正統後継者 – Cz P-09
銃というのは、一つのアイコンだと思う。
例えば、ルパン三世におけるワルサーP38、ゴルゴ13におけるM16。例えばハードボイルド小説で、ただ「銃」というよりも「ナンタラカンタラマグナム」と名を挙げてあるだけで、全然雰囲気が違う。ほかのガジェットは名前が適当でも、車と煙草、酒と「銃」だけは、こだわっているような作品によく出会う。
当サイトを読んでいる方で、自分も創作をたしなんでいる、あるいは創作を始めようとしておられる方も多いのではないのだろうか。
で、「自分の主人公に持たせるにふさわしい銃」を探しておられる方も少なくないのでは?
しかし、メジャーな銃は一通り出尽くして、それを使ったら他の作品とかぶる。「誰も知らないのだけど、一目見るだけで格好良い、そんな銃ないだろうか? 」と言う方もおられるのではないか?
しかし、探せばまだまだ未開の地は あるものだ。
紹介しよう。Cz P-09だ。
Cz P-09というのは、かの有名なCz75を送り出した共産圏のメーカー、チェスカー・ズブロヨフカが生み出したCz75の最新シリーズだ。
まずその前に、Cz75に触れておかねばなるまい。
世界最高のオート Cz75
Cz75というのは、日本のガンマニアにとって、一種の伝説となっている。
ファーストとセカンドモデルがあるけど、特に、ファーストモデルが。
というのが、1975年に発売された本銃を、「コンバット・シューティングの神様」と呼ばれる名ガンマン、ジェフ・クーパーが「世界最高のオート」と評したのを皮切りに、日本でも有名なガン・フォトグラファーでシューターの、イチロー・ナガタも絶賛。
そして、ホラーの大家、菊池秀行がいち早く自分の小説に登場させた。
あるいはまた、女賞金稼ぎの活躍を描く大ヒット作『ガンスミス・キャッツ』で、主人公のラリーが、このファーストモデルを愛用。作中で絶賛したことから、Cz75、特にファーストモデルは、知る人ぞ知る名銃になった。
コストを気にせずものを作れる共産圏だから、材料も一級品、加えて、かなり精密な工作ができた・・・というのが、Cz75ファーストの伝説を支える逸話にもなっている。
だけど・・・実際に使ってみた方の話だと、よくできたオートという感じで、「伝説」とするのは、オーバーだという意見も聞かれる。
実は、件のジェフ・クーパーも「45口径だったら。」という条件を付けたし、70年代のこのころ、共産圏は秘密のヴェールに隠されており、その中で作られたCz75に、過剰な思い入れを込めることができた。
しかし、実用一点張りの機能優先の美と、ところどころに見える女性的な美の前に、思わず虜になってしまう。私もCz75シリーズは、スペアも含め六丁持っているほど。
それでは、ファーストとセカンドの最も大きい違いは何か? というと、ファーストは、引き金までしか、スライドを包むフレームが来てない。ところが、セカンドは銃身の前へ延長されている。前者は、ショートレイル。後者はロングレイルと呼ばれる。
ショートレイルの方は、こんな短いフレームとのかみ合わせで大丈夫か? と疑念を抱くほど短い。が、そこは共産主義の強み。採算を考えずに、強度のある最上級のスチールを使ったので、強度は十分。
しかし、外貨を稼ぐために作られたロングレイルは、そんなにいい材料を使っていられない。だからレイルが、銃先端まで伸びている。
この「少しばかり品質が劣る材料」を使っているため、ファーストより評価が悪いセカンドだが、それでも心をひきつけてやまない名銃であることは間違いない。
Cz75の直系 Cz P-09
そして、その直系アッパーバージョンが、今回紹介するCz P-09だ。
線が細く、華奢な、どちらかと言えば女性的でクラシカルなCz75とは対照的に、今風な軽量ポリマーフレイムの一回りごつい銃に仕上がっている。
だけど、スライドをフレームが包み込む構造といい、セフティなど操作レバーの位置と言い、あるいは、Cz75のシャープなスタイルをほうふつさせるデザイン。
コピーも多くつくられてきたが、その中でP-09は、正統進化のポジションにふさわしい。
実銃は、2009年に作られた生まれたての製品で、世界一の装弾数を誇る・・・9mmパラベラムで、グロックより一発ほど多い20発だが・・・。
他にも、より威力の強い40S&Wを使うバージョンもある。
特筆すべきは、組み込まれたオメガDA/SAという機構により、ダブルアクションオンリーにもできる・・・。つまり、普通のリボルバーのように、撃った後いちいち撃鉄が落ちっぱなしの仕様にも切り替えられるということだ。
「それってトリガーが重くなるだけで不便じゃないの? 」と声が上がりそうだが、さにあらず。
これならトリガーが重くなって、そこに余計な力が加わっても、動きづらくなる・・・つまり、暴発を防げる。そもそも、ダブルアクションのオートは、撃鉄を落としておけば安全なもの。あるいはまた、リボルバーを使い慣れている人にとっても好評だ。
そう、テロリストとやりあえるほどの戦闘能力がある銃とは無縁だけど、とりあえず護身用でいいから銃がいる、という人もけっこういる。
そして、やはり、護身用の銃と言えばリボルバー。例えば、古参の警官など、そればかり使ってきた人に、新しい操作体型を持つオートは受け入れづらい。
だから、ダブルアクションオンリーのオートも、需要が高くなっている。
というのが、例えば最新のワルサーP99にも、このダブルアクションオンリーのモデルもあり、これがユーザーの取得に大いに貢献した、という噂がある。
かように、いろいろ新しい機能を持って登場したCz P-09だが、それをいち早く、この2014年、夏に、台湾のメーカー、KJワークスがエアソフトガン化した。
アジア系のメーカーからのラインナップ、そしてその質
Cz P-09のトイガン化は、これが初めてだ。
最近、アジア系のメーカーから輸入される大陸系エアガンが、人気を得ている。
値段が安いことも、その強みの一つだけど、こんな風に、日本のメーカーではモデルアップしない銃がラインナップにある、ということも大きな美点だ。
で、KJワークスバージョンのCz P-09を見てみると、そのつくりの良さにうならされる。
アジアというと、安かろう悪かろうのコピー製品を頭に浮かべがちだが、この製品にはそんなものはひとかけらもない。
手にずっしりとくる重み。あるいは日本輸出バージョン限定の、グラスファイバー入りの強化フレーム・スライドと言うふれこみの本銃の質感は、これ以上ない触りごたえを約束している。
東京マルイ並にフレンドリーな値段で、ここまでの仕上げなら、十分に満足だろう。他のメーカーでは、これだけで2万から3万近くかかるところもあるから。
早速握ってみる。まず、太目に見えたグリップが、予想以上に握りやすいのに驚かされる。
見た目より細身だし、グリップを握った時に、左右両方で親指が来るところが絶妙に引っ込んでいるので、右手でも左手でも握りやすい。これは左利きの多いアメリカ人にうれしい仕様だ。
この握り心地は、「手に吸い付くような」ホールド感が大好評なCz75譲りだ。
そして、左右どちらでも操作できるように、セフティは両方についている。これはCz75にはなかった仕様で、こうしたちょっとしたところが、やはり今風の進化を遂げている。
また、操作系統も、セフティがフレーム後部についている、Cz75と同じレイアウト。
撃鉄は、今はやりの軽量化を狙ったスケルトンタイプだが、一発でコッキングされているかどうかがわかる外部露出式。
目新しいレイアウトではなく、ごく普通のもの。しかし、その普通さがありがたい。Cz75だけではなく、コルトガバメント系に慣れている人にとっては違和感なく使える。
また、セフティは、撃鉄をあげっはなしで固定ができる、「コックアンドロック」方式を採用。これは、いざというとき、撃鉄を起こす手間が省ける。ガバメント感覚だ。
しかし、これ以外ではセフティが効かない。
実銃では、撃鉄が下がった状態でも、しっかりセフティがかかると思うのだが、KJワークスバージョンでは、撃鉄を下ろすと、かからないのだ。
私の買ったバージョンだけが、そうなだけかもしれない。しかし、セフティが効くのは、撃鉄を上げた時のみ、というのも、なんとなく不安だ。
そしてまた、撃鉄を押さえながらゆっくりと撃鉄を下ろしたら、暴発する危険が高い。
普通、ダブルアクションのエアソフトガンなら、撃鉄を倒せば、不要な力がかかった時でも、撃鉄を固定するハンマーリバウンドなどがついているだろうが、これにはそれがない。
結果として、ハンマーダウン時に、ハンマーに余計な力がかかろうものなら、暴発する危険が高い。撃鉄が完全に落ちない「ハーフコック」状態を再現しているのだろうか?
だけど、撃鉄を下ろしたいなら、マガジンを抜いて引き金を引ききった方がいい。
実銃なら、ハンマーを安全におろすデコッキング機能がついているのだが・・・それは省略されている。残念。
あるいはまた、ガス注入時の問題。ほかのガスガンと比べ、チャージ時間が短く、あっという間にガスが逆流する。
また、ガスタンク容量は少なめ。それでもワンマガジン撃つのは不便はないけど・・・。
しかし、ネットで検索すると、かなり熱意をもってマガジン問題に対処している方も少なくない。この銃の人気の高さがうかがえる。
何せ、日本のトイガン界は、ガバメントとベレッタが独占しているような感がある。売れるもの優先で作っているのだろうが、それでも、マニアにとっては毛色の変わった銃も欲しい。そんなことを端的に表しているような気がする。
機能的に言うと、弱点も多い銃。しかし、私はこの銃を気に入っている。
持った時に銃から伝わる剛性は、かっちりしていて、信頼を与えてくれる。国内メーカーでも、「なんかふにゃふにゃしてる」感がある銃もあるのに・・・。
あるいはまた、Czのトレードマークみたいな細身のスライドは、前・後部に溝が入って引きやすい。顎が延長されたような、銃身下のアタッチメント装着用レイルも、ジェリコ941のように迫力があっていい。金属でできているアウターバレルも、スライドを引いたときにいい音を出してくれる。
何よりも、このすっきりとモダナイズされた、Czのラインが、格別のルックスを与えている。
まさに、「主役にふさわしい」カリスマ性を持った銃なのではないだろうか。
そして、今ならこれをメインに使っている主人公クラスの人はいない。まさに手つかずの秘境。
あなたが創作を心指していて、しかも、それがガンアクションものだったら、銃の選択肢にぜひともこれを入れてほしい。