Cz75とガスガン、そしてCz75にまつわる中二病
君の青春にCz75はあったか!?
日本を代表するガン(銃)の第一人者、イチロー・ナガタ。そして、45オートの神様、ジェフ・クーパーでさえ、「最高のコンバットオート」として賞賛を惜しまなかったかの銃。
実際にジェリコ941。そして、ジェフ・クーパーの肝いりで作られたジェフ・クーパーのための理想のモデル、ブレンテン、と数々のクローンも作られているのが、原作の優秀さの証。
中でも『ブレンテン』は、スマッシュヒット刑事ドラマ『マイアミ・バイス』、主人公の、ソニーの手に握られることとなった。このブレンテンにあこがれた方もいるかもしれない。
それはさておき、CZのファーストモデルは、東側の共産主義が功を奏し、コスト度外視な上質な鉄が使われているらしい。なんせスライドを打ち合わせてみると、澄んだ音さえ響くそうな。特別に手をかけて作られたファーストモデル。今でもコレクターの間ではよだれものらしい。
日本で人気のCz75
そう、日本では異常に人気があるのであった。Cz75という銃は!他の国では、いい銃の一つという認知に過ぎないのにも関わらず。
というのが、菊池秀行が作中に登場させたのを皮切りに、続いて漫画『ガンスミス・キャッツ』の大ヒット。主人公、ラリーがこの銃を偏愛。劇中でCZ最強説を何べんも唱えている。
で、漫画『パイナップル・アーミー』でも、主人公が惜しげもなく世界最高の賞賛を与えたり、ゲーム『バイオハザード・ガンサバイバー』などというメジャーなタイトルにも出てきたり、メディアでの露出も激しい。
これら一連のブレイク。80年代にトイガン道の洗礼を受けたガンマニアは、懐かしく思い出すかもしれない。
なにせ「世界最強」だ。ピュアな心を持つ永遠の中二病患者は、もうそれだけで辛抱たまらない。
最強は、すべてのことが許される。かつ、銃を知り尽くした一握りの選ばれしものにしか与えられないアイテム!自作小説にも「せかいさいこうのおーと」として、この銃を出したような人間が、もしかしたら私以外にも居るかもしれない。
このあたり、日本の刑事ドラマで、MGCのコルト・ローマンが使われていたので、日本では「ローマン」というめちゃくちゃマイナー銃が人気あるのを彷彿とさせる。
Cz75は世界最高のオート、ただし…
しかし、現実にCZ75という銃は、「伝説」にふさわしい名銃だったのだろうか?
冒頭のジェフ・クーパーの言葉。「世界最高のオート」という評価は、「45オートだったら」という但し書きがつく。日本では見逃されがちだが。
それだから、彼は、その弱点を補うべく、10mm口径というハイパワーな弾を使えるブレンテンをリリースしたのではないか。
改めてCz75を見てみよう。
まず、フレームを包み込むようにして作られたスライドは、この銃の最大の特徴。しかし、スライドが細すぎて、つかみづらい。
タイトなスライドどうしのかみ合わせは、逆に言えば狂いに弱く、塵芥が入った時に作動不良を起こしやすいという不安がある。
サイトは一昔前のもの。今の銃と比べると、やはり時代を感じてしまう。そもそも、デザイン・機構的に、特に奇抜なものは見当たらない、きわめて普通の銃だ。
ただ、ブローニング・ハイパワー。コルト45オート。奇をてらわない、きわめてストイックでスタンダードな設計こそが、時を超えたバトル・プルーフ。そして美しさを生み出すのかもしれない。
そういう意味から見ると、CZ75は、現代オートで必要なものをすべて組み込んでいる。
特に、ブローニングや45オートが無愛想に見えてしまうグラマラスなスタイル。Cz75は、とにかく「カッチョイイ」これに異論をはさむ人はおられまい。
トイガンのCz75 – マルシン
というわけで、Cz75も、古くはLS、マルコシなどのマイナーメーカーがこぞって出していた。
しかし、時代はエアコッキングからスライド固定ガスガン。そしてガス・ブローバックをせぬものはガスガンにあらず、というような風潮になってきた。
ただ、これが曲者!まるで棒のようにスリムなCZのスライドに、ブローバックシステムを組み入れようというのか?しかし、この難問に真っ向から挑むつわものもいた。マルシン工業がそうだ。
驚くべきことに、MGCが初めて「使えるブローバック」グロック17をリリースしたばかりの時期。つまり、ブローバックの黎明期にマルシンはCz75をリリースした。しかも、ブローバックとともに空薬莢が飛ぶ、前代未聞のシステムを搭載して!
実弾を模したカートリッジ。その先端にBB弾を込める。そして、そのケースをマガジンに装填。マガジンキャッチがかかる心地よい手ごたえに酔いながら、スライドを引く。とどめとばかりに、チャンバーに入り込む薬莢。
手順もそうなんだけど、この「チャンバーから鈍い金色の輝きを放つ薬莢」は、リアルの一言!そして、トリガーを引くと、撃鉄が落ちBB弾を発射。さらに引き金を引きこむと、薬莢を加えこんだエジェクターが作動。シャコン!という心地いい音とともに、地面に金色のエンプティケースが!
「ガスオペレーションシリーズ」と名うたれて発表されたこれは、まさにガンマニアの夢!ガスガンとモデルガンのハイブリット!
だったらよかった。現実はそう甘くない。出てきたものは、ダイエットに失敗した女子みたいなCz75だった。うん。中途半端にデフォルメされていて残念。特に、「吸い付くような」グリップは、マガジン以外にも、ガスタンクを付け加えたためにおデブちゃんになってしまう。お世辞にも握り心地はいいとは言えない。
そしてまた、恐ろしく燃費も悪い。ガス効率も、連射しようものならすぐガスが冷えて生ガスを吹く。快調なのは夏場の炎天下ぐらい。冬には作動が望めない。そして、快調であっても、ワンマガジン15連射までガスが持たない場合もある。
と、なんだかなぁ。な銃だった。
だけど、やはり。。。というわけで、再びカート式ブローバックは蘇った。マルシンの最新の技術が惜しげもなく注ぎ込まれているだけあって、初代とは雲泥の差を誇る。
二段引きなトリガーは改められ、弾の発射とブローバックがワントリガーで起きる。少なくとも、普通のガスガン並みの性能は持たされている。もうこれで、生ガスを吐きまくるカート式ガスガンとはおさらばだ!多少デフォルメしてある部分もあるけど、前作よりフォルムはスリムになった。
また、驚くべきは命中精度。カートは稼働するものだし、それだけ銃身とのぶれも多いのがカート式の宿命、と思って期待はしてなかったのだが!当たる!少なくとも五メートルの空き缶は余裕で落とせる。
ライブでカートが動くから、どうしても弾詰まりは起こってしまうが、手動で薬莢を弾き飛ばすのも、まさに実銃感覚。相変わらず、冷えに弱い。さらには、安定した作動と引き換えに装弾数が八発プラス一になった。薬莢が9mmパラべラムと思えないほど小さい。など不満の声もないではない。
それでもここまで快調な動作を味わってしまうと、もうこいつが手放せなくなる。
弾丸を入れなくても、モデルガンとして楽しい。実際、ブローバックとともにカートが飛んでいく感覚は、新次元!少し銃をいじれる人向けだが、手にする機会があればぜひこのアクションを堪能してほしい。
トイガンのCz75 – MGC、そしてKSC
そして、CZ75という難関に立ち向かった勇者がもう一つ。今は亡き、トイガン界の雄、MGCだ。使えるブローバックの先駆者として、もちろんCZもラインナップされた。
私ももちろん手にした。そして衝撃を受けた!本当にスライドもグリップも予想以上にスリムだった。
排莢さえしないけど、実寸を再現したようなボディは、細かいところまでリアリティある造形が詰められている。特に、手に吸い付くようなジャストフィットするグリップは、MGCの命脈を受け継ぐKSCにポン付けできる。この辺の精密さで、初めてCZがどうして愛されているか肌で分かった。
何せ、今までマルシンのものしか知らなかった私。この銃でCZ75に「初めて」触れたといっても過言ではない!しかも、「伝説」の初期型、ファーストモデル。さらにはオリジナルカスタムモデルまで作っていたことがうれしい。今でも、私の人生で出会ったベストトイガンの五指に入るCZだ。
しかし、共産圏ならではのコスト度外視な上等の鋼鉄を使ったスリムなボディを、当時の柔らかい素材で再現するのは無理がある。東京マルイばりにバカスカ撃っていたら、あっという間にお釈迦になった。なまじスタイリングがよかったので、その死は非常に悲しかった。
しかし、時を経て、伝説は再び蘇る。MGCの後を継ぐメーカー、KSCがCZ75を蘇らせた!
その特徴であるリアルさはさらに拍車をかけ、マイナーチェンジを繰り返しながら、今に至る、KSCナンバーワンの人気を誇る。息の長いモデルだ。
特に最新作は、最新鋭のシステム7というエンジンを積んでいる。性能はもとより、これまでのどんなCZよりも、ガキン!というような反動が楽しめる。
CZというモデルは、何べんも言う通り、スライドが細い。ということは、当然内蔵されるピストンもスリムになり、それだけ強い反動は望めない。それがこの銃の宿命だったが、見事に覆している。
命中精度も高いが、しかし、それでもマルイ張りの耐久力は望めないのは、この銃の宿命。それよりも、ブローバックガスガンとして、ここまでの再現をしてくれたのはありがたい。
Cz75の気難しさ、それでも
ざっと紹介したCZ75のガスブローバックガンだが、やはりここまでスリムなボディにブローバックメカを積むのは難しいらしい。マルイのハイキャパなどに比べると、明らかに耐久性に難がある。
しかも、どちらかというと、細かいアフターケアが必要な気難しい銃。しかし、それを乗り越えてでも、この官能的なスタイル。
特に、手にしっくりくるグリップ感覚は、感動さえ覚える。人間工学、なんて言葉がない時代なのに、ここまで人に扱いやすいインターフェイスの塊!伝説も時を経て、クラシカルな鉄の塊のオートになったCZ75だけど、一度は手にしてみてほしい。
ポリマーフレームでは味わえない、ジャズの名盤を聞いているような感覚におちいること請け合い。西側のベールもはがれて、そのスペックが明らかになり、伝説の幻想もはがれてきたCZ75。
しかし、余計なファンタジーがなくなったことで、ますます「好き」という感覚に磨きがかかったような気がする。
その伝説に振り回された人は、「CZ75は世界最高。そう信じ込んでいた時が、自分にもあった。」と懐かしく回顧。
ポリマーフレーム直撃世代の人は、自分のその手で伝説を味わってほしい。
やはり、CZ75はいい女だ!