映画

西部の香りが漂うショットガン、ウィンチェスターM1887

男ならだれでもあこがれるショットガン。近距離防御不可な最強イメージは、まさに「力」の象徴。

今でこそ、レミントンM870に代表される「撃鉄が中に内蔵され、銃身下のポンプを引いて装填する」形が一般的だが、黎明期はそうではなかった。

様々な試行錯誤が見られる初期のショットガン。今回は特に、その基礎を作ったウィンチェスターM1887について取り上げよう。

ショットガンの生い立ち

そもそも、ショットガンなるものは、あくまでスポーツのものだった。
貴族がキツネ狩りなどのゲームをするために作られた、釣り竿みたいなものか。だから、あくまで銃身二つにそれぞれ一発ずつ入る。二連発などというのんきなもので十分役を果たした。
現在でも、クレー射撃などのスポーツ競技でも、二発しか入らないものも愛用されている。「実戦」でなければ、十分に役を果たす。

しかし、「多弾数」が求められたのは、西部開拓時代になってから。
移民とともに持ち込まれたショットガン。
「一歩外へ出ただけで皆が敵」なサバイバル状況。
それは、近接戦闘に大いなる役割を果たした。
拳銃とは比較にならない、相手をミンチにしかねないパワー。
散弾、というメリットゆえに、一人で複数を相手にできる。
狙いがあいまいでも当たってくれる。
貴族のおもちゃだったそれは、たちまち取り回しが効くように銃身とストックが切り落とされる。今でいう「ソウド・オフ」だ。
このように「実戦志向」になってくると、今度は二発だけじゃどうしても足りない。
そこで、「もっと弾を!」ということになる。
それを受けて、M1887が完成した。

ターミネーター2でのインパクト、そして魅力

M1887。名前は知らなくとも『ターミネーター2』で見たことがある方は多いはずだ。

アーノルド・シュワルツェネッガー扮するT-800がバイクに乗りながら、これをスピンコックする。
名作西部劇の『駅馬車』。主役であるジョン・ウェインを彷彿させるその姿。

まさに「鉄馬」を駆る、現代のカウボーイ。
それを受けて、映画『ハムナプトラ2』にも登場。

M1887の最大の魅力。それは、今主流の「ポンプ式」ではない。

「西部を征服した銃」ウィンチェスターライフル同様。機関部の下につけられたレバーを開閉して装填する。
ライフルで大成功したウィンチェスターのレバーアクション・ライフル。加えてM1887には、銃器設計の天才。
あのコルトガバメント、ブローニングハイパワー。きりがないほど名銃を作り出したジョン・ブローニングを起用した。
これで、全米大ヒットは確定した、かのように見えたが、そうでもなかった。

というのが、レバーアクション。この機構は、強力な弾薬に耐えられるほど丈夫ではない。
だから、よりパワフルな黒色火薬を使うと、そのもろさが露見した。
実は、設計段階で、ブローニングは「ポンプアクション」をショットガンの最適なカタチとして提案していた。
しかし、レバーアクション・ライフルの成功に気をよくしていたウィンチェスター社。
そのこだわりを押し通したのが、あだとなった。
しかし、「西部初の連発式ショットガン」というのはインパクトがあったようだ。
駅馬車の警備はもちろん、法執行機関が取り出す最終兵器として、その名もズバリ「ガーズガン」として愛用された。

M1887のエアソフトガン

そんなマニアックな銃を、エアソフトガン化しているのがマルシン。

さすが、わかっているメーカー。これ以外にM1887のトイガンはない。
さらにうれしいのは、カートリッジにBB弾を仕込む「ライブカート式」仕様なこと。
リボルバーの装填儀式。それと同じく、「聖なる」装填儀式が味わえる。
心地よい音とともに、レバーを開ける。顔を出した下部チューブマガジンに一つ一つ弾を込めていく。
込め終わったら、コッキングする。確実な弾を加えこむ感触とともに、チャンバーに弾丸が滑り込む。
実射。マルシン特有の8mmBB弾。その大口径が繰り出す威力も、見ていて「ショットガン」撃ってる感にあふれさせてくれる。
また、発射音もちょっとしたモデルガン並みに迫力があるところもうれしい。
そして、コッキングレバーを引くと、空カートがはじき出されて、という名シーンが気のすむほどやれる。しかも、厄介な免許所持などなく!
むき出しの機関部の底にあるマガジンに弾丸を入れるのは、指が使えて厄介。加えて、全弾打ち終わらないと弾込めができない。という厄介な実銃の仕様もしっかりと再現。
装填にも少々コツが入り、BB弾のみのケースレスのように「するっ」と入ってくれるには、慣れが必要だが、そんな弱点もただ愛しくなるくらい、この銃は存在感にあふれている。
まさに「ターミネーターのごつい腕」が自分の手にある、この安心感!
マルシン製品の中でも「比較的耐久力がいい」と噂な一本。このような複雑なメカニズムを搭載しているからこそうれしい。
その名もずばり「ターミネーターモデル」なショートバージョンと、ストック・バレルがノーマルな「ガーズガン」タイプ。
二種用意されているのもうれしい。
独特、としか言えないこのアクション。ぜひ手元に一台置いてほしい銃だ。

そして、M1887を受けて、M1897の登場となるのだが、それはまた別の機会に。


Photo by nps.gov