リボルバーは電気羊の夢を見るか? – マテバ M-M2007
今もっとも日本ではやっているサイバーパンク、と言えば、やはり『攻殻機動隊』だ。
士郎正宗原作によるこの漫画は、鬼才映画監督、押井守の手によって、1995年に映画化される。そして、たちまちアメリカでビルボード誌のビデオ週間売り上げ一位となる。
日本のハイクオリティなアニメ・・・『ジャパニメーション』の名をとどろかせたとともに、サイバーパンクアニメの金字塔となった。
その人気の証明。
劇場版続編『イノセンス』(2004年)は第25回日本SF大賞受賞。さらに、2002年、2004年、2006年にTVシリーズが作られる。最近では、2013年に、劇場版『攻殻機動隊 ARISE』が作られたことを覚えているファンの方もおられるだろう。
また、原作である漫画、そしてアニメの世界だけにとどまらず、小説、ゲームと、まさにメディアミックスを地で行く展開が行われている。
挙句の果てには、カロリーメイトと、『秘密結社 鷹の爪』で有名なFROGMANがコラボした作品まで出ている。そして、そのロングランを記念して、25周年記念サイトまで作られている。
ここまで人気のある作品なら、ゲーム・小説と、様々なメディアミックスが進んでいる。しかし、その中でも、これは異色だろう。
マルシンのエアソフトガン『マテバ M-M2007』
そう、『トグサの銃』だ(ページ上部の画像は実在するモデルMateba 6 Unica、M-M2007は架空の銃)。
攻殻機動隊、通称公安9課メンバーの中でも、異色の存在が、トグサだろう。
刑事畑から引き抜かれた彼は、メンバーがほとんど大がかりな義体化をしている。反して、「ほとんど生身」、そう、脳をネットにつなげることができる程度の軽度の改造しかしていない。
劇中で、彼と組むことになった、同じく公安9課のバトーが、「防護服着たサイボーグを、(手榴弾)たった二個でやれるわけねぇだろ。」と漏らすシーンがある。
しかし、トグサだったら即死だ。事実、このシーンで手榴弾の洗礼を受けそうになったトグサは、「カミさんと子どもの顔が浮かんだ。」と、死を覚悟した言葉を漏らした。
で、かようにアナログ派なのを、そこはかとなく感じさせるトグサは、九課のリーダー、草薙素子をして、「戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品で構成されたシステムは、どこかに致命的な欠陥を持つわ。」として、トグサの異端さを大いに買い、刑事畑から引き抜いている。
で、かようにこだわりのある(?)男なのだから、持っている銃も一味違う。
オートマティック全盛な劇中の中で、リボルバーを愛用する。しかも、S&Wやコルトではなく、「マテバ」だ。
「マテバ」というのは、リボルバーの中でも異色のメーカー。
何せ、シリンダーが上にスイングアウトする。リボルバーなのにオートマティックでシリンダーを回す。など、一味違うリボルバーを作っている。
「変態リボルバー」好きにとってたまらないメーカーだ。
で、劇中に使用されるマテバM-M2007は、オート機能こそないけど、シリンダーが上に開くタイプ。
これは、実銃のマテバなら、反動を抑えるために銃身が下にくる設計に合わせて、そういう構造になったのだが・・・。
反動の来ないエアソフトガンでは、当たりにくいだけ!
しかも、シリンダーを上にはじき出すには、いちいち手を持ちかえて、シリンダーを持ちあげねばならない。
普通のリボルバーなら、シリンダーが重力に従って、「ただラッチを開けて左に倒せばシリンダーが出てくる」
その当たり前なことが、いかに便利か、ということが身を持って示してくれる。
弾の装填というところから、人を選ぶのがマテバM-M2007なのだ!
しかし、視覚的、ギミックとしては本当に楽しく、ノンフルートのシリンダーが、ガバッと上にくるのは、見ていて頼もしい。
また、中折れ式+シングルアクションアーミーのような弾の入れ心地も、どこかノスタルジックで面白い。
しかも、この弾、9mmパラベラムのカートを模していて、おもしろい。
というのは、この銃は本来357マグナムを使用するのだが、攻殻機動隊では、「職場内の弾の互換性」を狙って「9mmパラベラム」にしてある。
リボルバー用の弾薬なら、排莢するときに、弾のヘリの出っ張っているところにひっかけて出す、というのが一般的なところだ。そういう弾の底辺が出っ張ってるのを、リムド型と呼ぶ。
しかし、オートでは、ヘンな突起があったら、作動不良を起こしてしまう。
だから、ふちのないリムレスが一般的。
(下の図 左がリムレス弾 右がリムド弾)
だけど、このエアソフトガン「マテバM-M2007」は、あえてリムレス式を採用している。
もちろん、排莢の時、弾がシリンダー内に詰まって出てこない、などというトラブルはほとんど起きない。
さすが、カート式リボルバーの老舗、マルシンの真骨頂だ。
さらに言うと、初回限定版では、映画に出てきた、「マーカー弾」を模したストラップがついてきた。
劇中では、9mmが、てんで効かない相手に対して、「じゃあこれでどうだ!」とばかりに発信機能付きのこれを撃ちこみ、尾行するシーンに生かされた。
蛇足だが、監督の方でも「トグサはリボルバーを持たせたかったけど、マグナムじゃキャラに合わない。さりとて、マテバの9mmを振り回しても時代が違う。通用しない。」というガン・キャスティングらしい。
この辺のこだわりを、見事に再現してくれたマルシンに感謝!
もう一つ、この銃を手にして驚くのは、意外にかなり大きいということ。
何せ、『ダーティハリー』で一躍有名になった、当時世界最強を誇った「泣く子も黙る」44マグナム。
それを使うS&WM29と、ほとんど同サイズなのだ。
使ってる弾が9mmなのに!
これは、銃身が下にくる、そして、特殊な構造のシリンダーの軸の強度を確保しなければいけない、というので、ごつくならざるを得ない仕様なのだが、それにしても、このでかさは、鉄材を切り落としたような、普通の銃の二倍はあるバレルや、ノンフルートののっぺりとしたシリンダーと相まって、かなりの迫力を醸し出している。
また、グリップなんか特にそうだけど、オートマティックをほうふつさせる、直線が多用されたデザインは、まさにSF映画にふさわしいフォルムをしている。
実は先端から、ビームが出るんだよ、といわれても、すんなりと受け入れてしまいそうなデザイン。
人を選ぶデザインだが、今までのリボルバーが、S&Wのコピーしかなかったのに辟易していた方には、飛びつきたくなる魅力があるのでは?
事実、私は飛びついた! 予約まで入れて、ド定価で買ったし・・・。
でかい、使いづらい、当たらない、と三拍子そろった銃だが、なるほど、トグサに「俺はマテバが好きなの! 」と言わしめる魅力を持った銃であるのは間違いない。
何せ、劇中に使用されるホルスターまで売り出したマルシン、かなり気合を入れて作ったのが功を奏したのか、ぼつぼつと今まで再販を繰り返している。
8mmBB弾仕様が6mm弾仕様になったり、組み立てキットとして廉価版が発売されたり、一部のガンマニアが「短命に終わるイロモノ」としての声もよそに、それだけマテバ愛好者も根強く存在するのだ。
まさに、「同じ規格品で構成されたシステムは、どこかに致命的な欠陥を持つわ。」だ。
うれしいことじゃないか。
中古市場をあさるもよし、組み立てて、秋の夜長を楽しむもよし。
劇中でも、散々マテバをオートに変えろと揶揄されているトグサ。癖がかなり強くて、実際、サバゲなどに投入すると、本当に「トグサ」になり切れる逸品だ。
そして、マテバを握って、こういうのだ!
「準備できてる?」「マテバでよければ。」