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特撮リバイバルの今だからっ!『科学少女 サイバリアン』

最近特撮のリバイバルブームが激しい。その皮切りとなったのが、80年代の筆頭ヒーロー、銀色の甲冑に身を包んだ、メタルヒーローという概念を作った「宇宙刑事ギャバン」

それが、2012年のスーパー戦隊『海賊戦隊ゴーカイジャー』の劇中に参加した!しかも、堂々と『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン』と、タイトルに銘打たれているように、ギャバンは堂々の主役なのだ!

それは、80年代の特撮ファンには、驚愕と感動をもって、そして、今を担うちびっこ諸君にも、新鮮で力強いヒーローとして迎えられた。

その証拠に、同年、ギャバンのリメイクとして、完全オリジナル、劇場版『宇宙刑事ギャバン』が作られる。

また、次の2013年には、再び戦隊もののゴーバスターズと共演。(Mission31「宇宙刑事ギャバン、現る!」 新・ギャバンだけど・・・。)
まさに破竹の進撃だ!

これだけでも、80年ガキ世代にはたまらないのに、新旧ヒーローのクロスオーバー作品として、2013年にリリースされた『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー対戦 Z』には、なんと『機動刑事ジバン』『世界忍者戦ジライヤ』まで登場!全てを覚えてる方はそう多くはないかも知れないが。

さらには『ライオン丸』『電人ザボーガー』まで新作としてリメイク!

そして、2014年に入ってからも、劇場版『キカイダー』が作られ、その年のの10月10日には、なんと『宇宙刑事シャリバン』が、そして、11月7日には、『宇宙刑事シャイダー』が、それぞれ『NEXT GENERAITON』として、Vシネマとしてリリースされた。

まったく、昭和のあのあっつい黄金のヒーロータイムを経験したおっさんにとっては、感涙物の話だ。
しかし、ここまで旧作のリメイクが激しいのなら、この作品に触れておいても悪くない。
科学少女サイバリアン』だ。

サイバリアン01

『科学少女サイバリアン』というのは、紘。という方が書かれているWebマンガだ。
しかし、主題歌まで作られてしまうという、一部には熱烈な盛り上がりを見せている。

あらすじは次の通り。

『科学少女サイバリアンこと、杏は、タチバナ科学研究所に勤める普通のン学生。しかし、ひとたび「魔法少女」がらみの事件が起こると、魔法に対抗すべく最強の科学を総動員する正義のヒロイン「科学少女」サイバリアンとなって、今日も人を闇に引きずり落とそうとする悪の魔法少女を狩っていく。』

サイバリアン02

劇中で何度もささやかれるように「進化しすぎた科学は、魔法と区別がつかない」・・・SF界の巨頭、アーサー・C・クラークの言葉だが、もはや日本を浸食せんばかりの「魔法少女」に対抗するため「科学」を持ち出してくるのは、一見当たり前に見えるが、当たり前すぎてかえって誰も気づかなかったのではないだろうか?

また、この物語は、『鉄腕アトム』『キャプテン・フューチャー』などの懐かしいにおいがする。
科学がまだ純粋に信仰され、明るい未来を作り出していく。
そう、「科学が万能である」という幻想は、とっくの昔に打ち砕かれている。

だからと言って、今や、ディストピアとか、バットエンドとか、鬱フラグ立てまくりなSFが多いのではないのだろうか。
特に、ロボアニメでは、主人公からして、背中に姿勢強制ギブスでもはめ込んだ方がいいネガティブで軟弱なやつが蔓延しているのではないか?

とはいえ、このお話。
例えば、杏自身も苦悩している。

というのが、杏自身、魔法少女として覚醒したのだが、それを無理に科学装備で抑え込んでいる。人ならざるものになる自分と、人であろうとする二律背反。

悩めるヒーロー(杏はヒロインだが)、というのは、仮面ライダーから延々と引き継ぐ伝統だ。

あるいは、例えば、敵を倒した時に、杏が、つぶやかざるを得ない言葉「わかってても、やりきれないわね。」に集約される思い。など、けっこう一筋縄ではいかないハードさも魅力的!

サイバリアン03

だけど、『サイバリアン』がそれでいて、鬱SFにならないのは、なんといっても杏の力。
普段は相棒の文治の突っこみ役ばかりやらされている娘が、ひとたび事件となると、抜群の集中力、爆発力を発揮する。
自分のダメージを根性でカバーし、何べんも何度でも立ち上がる姿。

熱血感で、自分が正しいと思ったことはすぐ行動に移す。だけど、決して扱いにくい人間ではなく、十人いれば十人ともが好感を持つ、素直で勇気あふれるという、ヒーローをそのまま絵にしたような(あ、これ漫画か)人。

特に、太陽娘と言いたくなる明るさ(ちょっと能天気とも言い換えられるけど・・・。)は、ハヤりのダウナー系ヒーロー・ヒロイン系を吹き飛ばすように頼もしい。

実際に一読したら、きっとツンデレでドジっ子入ってる、さらにハイテンションな彼女の魅力にひかれるに違いない。

そして、「それが特撮とどう関係があるの?」という話だが、とにかく特撮ネタが多い。いや、多いという言葉では形容的ないほど、コマの間にみっちりと詰め込まれている。

もともと、一コマ目からギャグの嵐が吹き荒れ、シリアスで暗い展開を中和しているのだが、それにしても、タイトルであり彼女の名前である「サイバリアン」からして、ギャバンの愛機だし、「科学少女サイバリアンは、わずか0.5秒で、科学装備を完了する。」などのくだりは、まさにそのもの!
(実は、これにも意味があって、「サイエンス・バリアブルガール・杏」・・・科学可変少女・杏という意味が込められているそうだ。芸コマっ!)

サイバリアン04

杏が魔法少女を追い詰めた時に読み上げる「対魔法少女特法」は、機動刑事ジバンが敵怪人を追い詰めた際に読み上げる「対バイオロン法」のオマージュだ。

サイバリアン05

杏の必殺技「サイバリアン・クラッシュ」からして、最強のてつをとも誉高い「仮面ライダーブラックRX」の必殺技、「リボルクラッシュ」。

サイバリアン06

また、そんな風に、マニアックなネタになると、読者がついて来れないばかりか、「こいつ、俺の知らないどーでもいいことを得意な面してしゃべるんじゃねぇぞ!」みたいなイヤミ感が生まれる危険性がある。

しかし、『サイバリアン』は、そう言うことは皆無だ。というのが、紘。氏の卓越したギャグセンス。

元ネタがわかりにくくても「ビジュアル的に楽しい」「台詞的にかっこよく、説得力がある」ネタをチョイスしている。

つまり、元ネタを知らない方にも十分楽しめる。

SFマニアだからと言って、SF小説家になれるわけではない・・・という名言があるが、あんまりにも特撮を愛しすぎて、その「愛の力」で、オマージュを力いっぱいぶち込んだつもりが、読者を辟易させる失敗・・・。

これは、プロでさえ時々見られがちな罠なのだが、これを「わかりやすいものをチョイスする」というテクニックで巧みに回避している。

また、頭から尻尾まで詰め込まれているギャグも、「頭とセンスを使っている」のがひしひしと感じられて面白い。

「科学少女」のくせに、機械音痴で、いまだにガラケーを愛用する。

「派手にやるなよ!」「派手に行くわよ!」というやり取り。

「たとえ、脱ダム宣言のあの人が許しても、この科学少女が許しません!」という見得切り。

常に読者の上向きに裏切るギャグの数々は、ちょっとした推理小説、意外なオチのショートショートと同じような頭脳プレイが感じられる。
頭も使わずに、「うんこちんちん」と叫んで笑いを取れるのは、ドリフだけで十分ですっ!

さらに言うと、杏の魔法少女に対する思い、友情、相棒の文治との絆。人間ドラマがしっかりえかがれていて、ギャグの隙間を引き締める。

しかも、そのような特撮のパロディをちりばめながら、その世界に引っ張られることがない。オリジナリティが非常に高く、一つのオリジナル短編として楽しめる。

パロディというのは危険で、ついそれに引きずられて、世界観などがめちゃくちゃになりがちだ。ネット上、いや、カネを払ってまで見る作品の中にも、そんな悪例はたくさんある。

しかし、その罠を回避して、ここまでオリジナリティが高い作品を作った紘。氏の手腕には脱帽!

近頃よく見受けがちな「うじうじと悩む人間ドラマ」が子ども向けの特撮まで、はやる現在・・・。

本来子どもにこそ、「前を向く勇気・希望」を高らかに訴えなくてはならないのに・・・。

だからこそ、『科学少女サイバリアン』は、読んだ後にすかっとした・・・だけど爽快感が残るだろう。

昭和の古き良き時代のゴールデン・タイムを彩った、あのヒーローの如く。
わたし自身、『サイバリアン』ももっと有名になるべき作品だと思う。

という具合に、ネットの海にも、まだまだ隠れているお宝がごろごろある!特撮リバイバルブームな今だから、一度は目を通してほしい作品だ。

というわけで、紘。氏の作品は、彼のホームページ『少年チョンボ』で好評不定期連載中。

サイバリアン関係のコンテンツも、もちろん充実。

ここでしか読めない外伝的小説、そして、ここでしか聞けない、サイバリアン主題歌
『Justice 科学少女サイバリアン』は一押し!

ニゴロウ氏の「魂」の作曲、作曲。愛原圭織氏が魂を込めて歌い上げる本曲。

宇宙刑事シリーズでおなじみの、作曲家、渡辺宙明氏を彷彿させる、力強いサウンドは、いまどき珍しいド本格なド直球の「特撮」ソングだ。

加えて、愛や勇気、そして希望、とどめとばかりに「主人公サイバリアン」の名を高らかに歌い上げる歌詞は、あの黄金時代のヒーローそのもの。

そんなものは照れ臭いといわんばかりに、上っ面のこじゃれた曲・歌詞で「いいこと言ってるようだけど何も言ってない。」最近の特撮の主題歌へのアンチテーゼさえ感じさせる。

また、フェイクだが、CDジャケット風のイラストの完成度も、懐かしい80年代のレトロ特撮風で、一瞬、この曲が市場にあるのかと勘違いしてしまうぐらい!

また、サイバリアン主題歌のほか、オリジナルのライダーソング、果ては実写顔負けの本格特撮ドラマ『ブレイク』もある。

紘。氏のモノづくり・・・特撮への愛と執念(笑)がひしひしと感じられる・・・というか、驚嘆せざるを得ないサイトだ!サイトにも書いてあるが、

「ヒーロー好き、ヒロイン好き、ギャグ好き、オリジナルもいいんじゃない?って言う方、暇で暇で時間を持て余している方、ゆっくりして行ってくださいませ☆」

とあるが、創作を志している方にも、是が非でも一読してほしい!

「ものを作り出す愛」ってのはこういうことだ!ということが身に染みてわかる名サイトだ。死ぬまでに一度は目を通しておいて欲しい(笑)

そして、『サイバリアン』で興味を持たれたら、本稿で紹介された数々の特撮作品もぜひ!アミノ酸や酸素同様に、生きていくうえで必要な不可欠な魂を、ドカンと注入してくれるはず!

少年チョンボ☆(仮)

©紘。(画像は許可をいただき掲載しております。作者に許可を得ない転載はご遠慮ください)