心のルパンストーリーに、もう1ページ – ルパン三世ゲームブック

去る2015年1月1日から、宝塚版ルパン三世がが上演されていたそうだ。

『ルパン三世 ―王妃の首飾りを追え!―』『ファンシー・ガイ!』

また同じ2015年1月には「金曜ロードSHOW!ルパン祭り」、と年始からルパン三世で賑わった年だったようだ・・・が、ルパンって「少女漫画」のキャラでしたったけ?

まぁ、『ルパン三世VS名探偵コナン』も、発表前はあれだけ「ダメじゃないん?」という評判があったにも関わらず、鮮やかにルパンの「頭脳プレイ」に的を絞った内容で、ふたを開けてみたら大絶賛ということもある。それに、ルパンの新作が出されるってことは、何よりもファンとしてうれしい。

今となっては、すっかり姿を見かけないが、それでも、80年代をガキ世代で送ったやつにとって、忘れられない古代遺産。それが、『ゲームブック』だ。

まだファミコンが産声を上げるか上げないかの時代。ゲームマスターという司会者が、集まったプレイヤーに架空の冒険を提供し、プレイヤーは、その物語の中で、自分の演じる役にはまる。いわゆる、テーブル・トーク・RPGといわれるゲーム。これを「いちいち戦闘判断や筋を考えるのめんどうだ。誰かに丸投げしよう!」というので、生まれたのがゲームブック。このゲームマスターを、「コンピューターに任せる」のが、今のゲームのRPG。

そう言った意味では、本とコンピューターの違いはあれども、同じ根っこを持つ。しかも、まだファミコンも「海のものだか山のものだかわからない。」黎明期だった。おまけにゲーム機は高い、という訳でその掛け橋的存在にあったゲームブックは、大ヒットした。

本屋には、漫画コーナーと並んで、ゲームブックコーナーが鎮座していた。そして、オリジナルストーリーから、果ては「テレビゲーム」のゲームブック化まで。なんと、シューティングゲームの『ゼビウス』から『グラディウス』なんかの、シューティングゲームまでゲームブックになった!どんだけ人気があったかを物語るエピソードだろう。

そして、その中でいつも本棚に並んでいるのが、双葉社のゲームブックだった。

小学生、いや、学生時代は、このシリーズのお世話になる方も多かっただろう。オリジナル、そして、テレビゲームの著名タイトルを含め、ラインナップがかなり豊富だった。くわえて、文庫本サイズの小ささと、値段の手ごろさは携帯・置き場所・お財布に優しく、学校では、回し読みがはやったものだった。そう、加えて、びっしりと小型の文字が詰め込まれている双葉社のゲームブックは、大人の香りがした。そして、大人の香りの代表作が、同社の『ルパン三世』シリーズのゲームブックなのではないだろうか?

「狙った獲物は逃がさない。それがこの俺。ルパン三世。」このキャッチフレーズでおなじみのかの怪盗は、このゲームブックシリーズの中で明らかに一線を画していた。まず、主人公が「大人の男」ということ。

子どもをメインターゲットとしていたファミコン。そのゲームブック化の主人公が子どもになりがちなのは否めないが、オリジナルストーリーの中でも、やはり「読者の感情移入」を目的として、子どもばっかりになっていた。その中で、日本を代表するMr.ダンディズムの活躍は、やはり頼もしかった。あるいはまた、ファンタジー・SFばかりが目立つゲームブック界の中で、「今現在」を舞台にしているルパン三世は、地に足がついた安心感があった。

例えば、ルパンがハンバーガーをほおばるとか、アイテムに有名タレントのブロマイドがあるとか、カップラーメンをすすっている。武器もやっぱりP38M19。ちょっとした日常感が「僕たちが生きているこの世界の延長線上に存在する、そんな感覚を醸し出していた。そして、その中身も、いかにも大人向けにできている・・・つまり「完全な悪玉、善玉」と割り切れない・・・一筋縄ではいかない、大人たちの思惑が交差するものだ。

例えば、大量殺戮兵器を防ぐために、ルパンに土下座までして、『Pファイル』を盗んでくれ、と頼む銭形。しかも、エンディングでも、その『Pファイル』をめぐる冒険は闇に葬り去られ、再びルパンたちは元の変わらない日常に戻る。しかし、誰の賞賛を受けるわけでもなし、もちろん一銭の得にもならないことに命を賭け、「あんな殺戮兵器もって、とっつぁんが追っかけてくれなくてよかったぜ!」と、それだけで良しとするルパン。

また、颯爽と去っていくルパンに「見よ、彼は盗人のようにくる・・・。」と、聖書の言葉を持ってくる小粋さ。ルパン特有の、このようなこじゃれた感覚は、このゲームブックでも完全再現されている。あるいは、「俺は誰の力にもたよらない。」と言って、挑戦してきたライバルに、最後で、彼の志にうたれた大勢の同志の前に、「うそだぜ。あんたにはこんなにたくさんの仲間がいたじゃないか・・・。」と一人つぶやくルパン。

そう、敵だからこそ拍手を送る。昨日の味方は、今日は敵。じゃ明日は・・・。と、一筋縄ではいかない大人の友情、愛が描かれていた。

少なくとも、この時代のゲームブックを圧倒していた。「敵のラスボス倒しました!めでたしめでたし。」な話ではなかった。子ども心に、そのような、ちょっぴりほろにがな友情の数々は、ハードボイルドをさりげなく刷り込んだものだ。どうしてTVスペシャルにならないんだ!というツブ揃い。

そして、その中身も、かなりしっかりしたもの。本格的冒険小説として用意されたものから、「本のくせにっ!」(いい意味で。)本格的にマッピングをしないと、攻略が遠くなるものまで、多種多用。つまり、例えば私のように「ストーリー」をがっつり味わいたい、という方から、「歯ごたえのあるパズル的なものをやりたい。」という方まで、ばっちり対応していた。

また、特に子ども心を引きつけたのが、独特のルパン口調を再現していたところ。山田康雄氏が完成させ、栗田貫一に継承されたお家芸ともいえる、「山田ルパン」口調。声を聞いただけで一発でわかり、なおかつ子ども、いや、大人さえも、その物まねを一度は口にせざるを得ない軽妙かつ、渋さが炸裂するその口調。で、ゲームブック内の文体は、まさにそれだった。

ゲームブックという媒体なので、当然、主人公は「俺」=ルパン口調なのだが、軽いとこは軽妙に、そして、ぐっとしめるところは、きわめてハードボイルドに、イーストウッドで。だけど破たんなく、「ルパン」という人格にまとめられている。まるで、読者に話しかけるように、脳内で再生される山田ルパンの声。このおかげで、すっ、と「ルパン」というキャラクターに同化。そして、読み終えた後は、スペシャル版を見た後のような重厚な余韻に浸れる。

この本で、すこし大人の世界を味わい、それからどっぷりとハードボイルドに入った方もおられるのでは?

という具合に、ゲームブックの中でも「アダルティ」な世界を見せてくれた『ルパン三世 ゲームブックシリーズ』いや、『ルパン』だけではなく、他のジャンルも。物語を「自分の力で」進める快楽。それは、ゲームブックがすたれても、アドベンチャーゲーム、そして、それが一線を退いても、サウンドノベルという新たなる翼で、はばたいている。

まだRPGという概念もよく知られていない時代から、TVゲームとの架け橋を担った「ゲームブック」インドアの遊びがメインとなってくる冬の夜。せっかくだから、メインのTVゲームを離れて、懐かしい品々にどっぷりはまる、というのも一興だ。