ユージの右手のカノジョ。その変遷 -『あぶない刑事』ユージの愛銃編
お騒がせの『あぶない刑事』劇場版が、2015年に満を持して出現。しかも、タイトルは『さらば、あぶない刑事』。つまり、最終回か!?というわけで、今回も、またまたあぶない刑事、今度はユージ編としゃれこもう。
タカさんとくればユージ、 柴田恭兵演じる大下勇次の愛銃は、けっこう変わってきている。
TVシリーズ第一期『あぶない刑事』・劇場版第一作『あぶない刑事』劇場版第二作『またまたあぶない刑事』
→コルト・ローマン(旧型)
TVシリーズ第二期『もっとあぶない刑事』劇場版第三作『もっともあぶない刑事』
→コルト・パイソン2.5インチ
劇場版第四作『あぶない刑事リターンズ』・TVスペシャルおよび劇場版第五作『あぶない刑事フォーエバー』
→コルト・キングコブラ
と、いう具合に、ユージはどうもコルト党らしい。しかも、軽快なスナブノーズ派。なるほど、軽やかに踊るように銃撃戦をこなすユージ。ジョークとともに放たれる銃弾。軽快でフットワークが効くユージには、スナブノーズがふさわしい。しかも、S&Wより曲線が多く、グラマラスなコルトリボルバー。刑事ドラマで古顔となっているローマンでさえ、ユージの手にかかると、イメージががらりと変わり、おしゃれになるから不思議だ。
というわけで、初めてTVシリーズでローマンにお目にかかった時、「なんだ!この銃は!?」とびっくりしたのを今でも新鮮に思い出せる。当時駆け出しのガンマニアだった私。「エアガンカタログ見ても、こんな銃、載ってないぞ!」それもそのはず。ローマンはモデルガン化されているが、まだエアソフトガン化はされてない。(2015年度の現在でも!)
しかし、旧型の特徴として、さりげなくむき出しにされているエジェクター。そっけないサイトなど、熟成したワインのようなセクシーさを見せるこの銃が、どうしても欲しかった。それが、私の初めてのモデルガン体験だった。
私が買ったものは、モデルガンブームの立役者、MGCの組み立て式キットバージョンだった。初めてのモデルガン組み上げは、それなりに難しいところもあった。これまでのプラモのように、接着剤なぞ一つも使わず、金属パーツの組み合わせ、そしてねじ止めでやっていく。まるで、何かのパズルをやっていくように、一つ一つの部品の作動チェックをやり上げていくのは、いかにも本物、そして、大人の世界に足を踏み入れたような気がして、ドキドキした。で、見事に動いたのだった。モデルガンというのは、精密なもので、何度かの作動調整は覚悟していたのだが。
実際に、買った後調整がいるモデルガンは珍しい話じゃない。ほとんど素組で、一発で動いた!この感動ときたら!2インチの短銃身は、発火の抜けがよく、派手な火花とともに、号砲のスターターピストルのような轟音を派手に響かせてくれた!おかげで、耳が痛くなったほどだ。誰にでも組めて、バンバンうってもヘタレない!以来、ローマンはトイレへ行くときも、寝る時も一緒になったのは、言うまでもない。まさに、銃を体の一部とするが如く!うん。バカですね。
で、徐々に、MGCのコルト・ローマンの偉大さもわかってきた。というのは、外見も満足でき、さらにはこの確実な作動性、堅牢性。それを買われて、同社の『ハイウェイ・パトロールマン41マグナム』とともに、数々の銀幕を飾ったのだった。例えば、説明不要の伝説的刑事ドラマ『太陽にほえろ』『西部警察』などを皮切りとし、名だたるアクション・ドラマには、必ずと言っていいほど出ている。敵も味方も、手にはハイパトか、このコルト・ローマンが握られている。そんな状態が続いたこともあった。
実際に、『あぶない刑事』シリーズでも、主役のユージ意外に、パパさん。落としのナカさん。その他港署面々が使っている。港署の備品かもしれない。実銃の、コルト・ローマンは、本国ではイマイチぱっとしない銃だが、こと日本においては、『銀幕の平和を守り続けた』おまわりさん、刑事の銃として、燦然とファンの心に根付いている。
というわけで、あぶ刑事ファンにも、そして、リボルバーを愛するすべての人にもおすすめしたい逸品だが、MGCはとおに無きメーカー。中古品でもちらほらお目にかかるし、旧式のエジェクターロッドが露出している、つまり、ユージの愛銃は、MGC製しかないので、ちょくちょくネットショップなどをチェックするのも手かと思う。
さらに、最近になって、CAWというメーカーから、リバイバルされた。CAWと言えば、オートマティックの祖、ボーチャードピストルを作って、ファンの度肝を抜いたのが記憶に新しい、高級モデルガンメーカーだ。そのCAWが、その持てる技術を持って、MGCのモデルガンをリバイバルし始めた。その名も「MGCリバイバル」シリーズだ。
まさに、2015年の技術でリメイクしたらこうなった!といわんばかりのいい出来。まさに、新しい血を得てよみがえったローマン。限定生産品なので、見つけたらゲットしてもいいかもしれない名作だ。ただし、エジェクターロッドのカバーがついた新型なので、こだわる方は注意されたい。
さて、TV第二シリーズ『もっとあぶない刑事』。そして、三作目の劇場版『もっともあぶない刑事』で、ユージは、コルト・パイソン2.5インチに切り替えている。
コルト・パイソンとは、今さら説明するのも野暮な超有名銃で、『シティハンター』やら、『仮面ライダークウガ』の一条刑事まで使っている、コルト社の最高級357マグナムリボルバー。仕上げもものすごい手が込んでいて、コルト・ロイヤル・ブルーと呼ばれる、この銃の深みのある表面仕上げは、定評がある。ただ、基本設計が古いので、ダブルアクションの切れ、シリンダーのギャップから出る火薬ガス漏れなど、S&Wのものと比べたらいけない。
ユージが使っているのは、2.5インチ銃身。ベンチレーテッドリブ・アンダーウェイト付ヘビーバレルが、短くなることによって、さらなる迫力と、奇妙な愛嬌を醸し出している。ノーマルのオーバーサイズグリップではなく、細身のサービスサイズ・グリップを付けているところが、またスノッブノーズらしいかわいらしさを醸し出している。
モデルガンの再現度なら、やはり、コクサイのパイソンが一番だろう。モデルガン全盛期から、「リボルバーのコクサイ」と名高いだけあって、各部メカニズムなど、他の追随を許さない。6インチ、4インチと、各種銃身があるが、ちゃんと2.5インチもあるのがうれしい。さらに、ヘビーウェイト樹脂だけでなく、金属のモデルガン・パイソンを出しているのは、コクサイだけだ。やはり、文字通り黄金の輝きを持つ、金属の肌は、いくらABS樹脂が頑張ろうが再現できないし、手に持った時の塊感がケタ違い。
もちろん発火させて遊ぶこともできるけど、この美しい表面仕上げを見ていると、そんなことをさせて、モデルガンを汚すのはもったいないと思わせてしまう。モデルガンというものは、発火させたらいちいちクリーニングがいる。これを怠ると、あっという間に火薬かすで汚くなり、最悪、動かなくなる。
実際に、このパイソンは観賞用に持っている人も多いと聞く。発火さえさせず、ただ、心の中の銃声を頼りに、弾をがちゃがちゃ込める。そんなオトナアソビの最たるものがわかる方へ、このパイソンを!
と言っても、本物の弱点。例えばデリケートなメカニズムをコピーしたのはいいけど、モデルガン用の素材なので、強度的に無理がある。
バンバン空打ちしていると、あっという間におかしくなる。調整できる腕も欲しいかも。あるいは、引き金を絞れば絞るほど、重く、堅くなるトリガーなど、弱点もきっちり再現してある。買う際にはご一考を。
それじゃ、エアソフトガンの方はと言えば、東京マルイと、タナカのパイソンが挙げられる。
マルイのものは、もはやお家芸となった24連射システムを積み、改良されたVパッキンで、2.5インチという短銃身で、オート並の命中精度をたたき出す。ダブルアクションも軽い。また、発射前に、シリンダー穴が、確実にバレルの位置で止まるので、弾道のずれも少ない。モデルガンのパイソンを味わった人にとっては、まったく別物に見えるだろう。性能、そしてリーズナブルさから言えば、これがピカ一。しかし、モデルガンと比べると、やはり質感で負ける。しかも、グリップにガスタンクがあるので、サービスサイズのグリップか取り付けられない。ユージモデルとしては、イマイチか?
ならばもう一つ、タナカのガスリボルバーは?というと、モデルガンに劣らない質感がGOOD。特に、メタルフィニッシュ系のものは、使い込んでいるうちに、黒い塗料がはがれ、地の銀が出てくるなど、かなり芸が細かい。もちろん、サービスタイプグリップも用意されている。ただ、銃身が3インチだ。
3インチ銃身のパイソンは「コンバットパイソン」と呼ばれ、カリフォルニア警察が特注で作らせたという話だ。しかし、2.5インチよりも精悍に、4インチよりは愛嬌のある面構えで、こっちにサービスサイズのグリップを付けるのも悪くないかもしれない。
3インチというのは、かのS&W、FBIスペシャルも「携帯に便利」かつ「必要な命中精度」を考えていったら、これに落ち着いたという、いかにもプロ向けな印象がある。このパイソンも、いかにも玄人、通向けなイメージが香り立つ。
という具合に、タナカとマルイのパイソンを紹介したが、どちらもカートを廃した多段数リボルバーなので、弾込め+排莢アクションが楽しみたいという方は、注意してほしい。
さて、劇場版第四弾『あぶない刑事リターンズ』および、TVスペシャルで前篇、映画館で後編、と、第二作にまたがって作られた『あぶない刑事フォーエバー』では、コルト・キングコブラ2.5インチを使用している。
実銃は、コルト・ローマンのメカニズムをさらに改良したコルト・トルーパーそして、MkⅤのシステムをさらに進化させた、正統派だ。なおかつ、タフで、パイソンより値段は格安なので、コルト社の代表的現代ダブルアクション・リボルバーとなった。パイソンを少し野暮ったくしたようなハンマー周りは、その代わりにパイソンにない頑丈さと愛嬌を感じさせるものになった。それと反対に、エジェクターを覆うカバーがつけられたバレルは、M19のようにタフさとスマートさを兼ね備えたイメージがする。さすがはコルト社の伝統を受け継ぐ357マグナム。
モデルガンとしては、KSC社から出ている。というか、1/1スケールで手に入るキングコブラのトイガンは、これだけだ。バレルのサイズも、6インチ、4インチ、そして、ユージの「2.5インチ」もちゃんとある。質感、再現性において、定評があるKSCの製品だけあって、撃ってよし、眺めてよし、のいい銃だ。しかも、最初っから劇中そっくりのラバーグリップがついているところもGOODだ。
だけど、知名度はイマイチだ。メジャーなヒーローが使っているわけでもなし。東京マルイが24連射ガスリボルバーで、出そうとしていたのだが、結局発売されなかったのは、マイナーさのためかもしれない。もっと人気が出ていい銃だ、と思う。ただ、KSCのキングコブラ。モデルガンなので、手入れはしっかりしよう。何せ、撮影現場でも重宝されている、モデルガンMK-Ⅲのタフさと作動性だから、作動がいかに優れているか、わかるだろう。いつまでも、元気で発砲できるように!
というわけで、ユージの銃の変遷を駆け足で見てきたが、けっこう銃を変えている。拳銃は男のアクセサリー、というわけではないが、ファッションの一部のように、けっこうコーディネートを考えている、ともうかがえる。さすが「セクシー大下」。しかし、その中でも「コルト」へのこだわりを伺わせるのが、さりげなく漂うダンディズム、と思っていたら、そうでもなかった!というのは・・・またの機会にでも。