ジャケットの色は変われども、変わらぬ相棒ワルサーP38
ルパン三世がTVシリーズで復活したのは記憶に新しいだろう。イタリアで先行放映し、その後の日本へ上陸。イタリアの風を受けたルパンをもなさんはどう評価されただろか。
このシリーズ通しての、新レギュラーとなったキャラもいる。その名は「レベッカ・ロッセリーニ」もちろん女性だ。これは、結構驚くべきことではないのだろうか。特にTVスペシャルなどでは、一回限りのヒロイン登場はルパン三世の恒例行事。
しかし、TV「シリーズ」なのだ。ルパンといえば、峰不二子。シリーズ登場時から、恋人とも、いつ裏切るかわからないスリリングなライバルともつかない性格。自由奔放な「女だったら一度はあこがれる」、しなやかで強い女性像を作り上げた峰不二子。そんな強烈な魅力を振りまく峰不二子と双璧をなすヒロインとは?
こんな意外なところからのアプローチでも、スタッフの気合の入りようはわかるはず。
ジャケットの色が一新されたが、その手にあるのはやっぱり永遠の相棒、ワルサーP38だ。今回は、このエピソードを見れば、もっとルパンが好きになる。P38が好きになる。ワルサーが印象的な使われ方をしたエピソードをご紹介しよう。
近年の記憶では、そのままズバリ、その名を関したTVスペシャル、『ワルサーP38』だろう。
「俺の過去がとっつあんを撃ちぬいた!」
アメイタリア国副大統領の誕生パーティ。ルパンはそこにいた。というのは、誰かがルパンの名をかたり、予告状を出したのだ。そして、ルパンと言えば、当然この方のご出陣。銭形警部だ。自分の無実を訴えながら、いつもながらの追っかけっこ開始するルパンと銭形。
しかし、今回は違っていた!暗闇から突き出された、一条の銀色の銃身。それが、銭形を狙った。血に沈む銭形。ルパンの目の色が豹変した。それは、戦友のとっつぁんが撃たれたから、だけではない。シルバーメタルのワルサーP38。それがルパンの過去に何か浅からぬ関係が!?
最近のルパンでは、特にお目にかからないハードボイルドな緊張感が、全編に漂っている。それが、一番最初のルパンを彷彿させる。謎の殺し屋集団。そして、そのエースである美少女アサシン・エレンも、そのクールな魅力に隠された純真さが、うまく「今風」の奥行あるヒロインを作り出している。
その死に満ち溢れた運命を打ち破ろうとするエレン。そして、過去との決着をつけようとするルパンが、実にうまいカルテットを醸し出す。特に、ラストのワルサーをメインに出したシークエンスの巧みさ。あれで涙した方も多いだろう。
そして、ファーストシリーズには、P38の見せ場が目白押し、と言っていい。何せそのエンディングの歌詞。滅び去るものへの男の美学を暗喩するように、ワルサーP38と叫ぶ。
作品内でのワルサーの小粋な演出。
例えば、伝説と呼ばれる『七番目の橋が落ちるとき』。
名も知らぬ少女を人質にとられたルパンは、悪党ボルボの傀儡となって、現金輸送車を奪おうとする。そして、人質交換には、ダミーの人形さえつかまされる。そして、銭形の手錠がルパンの手に。しかし、いつの間にかボルボの逃走用ボートには、ロープが結び蹴られていた。それにつながった桟橋の破片を、うまく水上スキーのようにして鮮やかに脱出するルパン。
しかし、両手がふさがれている。そこで、歯でスライドを引く。このかっこよさ!真似した方続出だろう。実際に、これのためにワルサーのモデルガンを買ったCくん。継ぎかけの歯でこれをやって、盛大に前歯を折ってしまったYくんは元気だろうか・・・というのは余談だが、一発で憎むべき敵、ボルボを沈める。しかし、これがガンマンの最後の一発なみに重い。
というのが、ここでの演出。
当時、まだ珍しかった排莢シーン。その中で、スライドと連動して銃口が下がる、ショートリコイルさえも再現した。まだ、他の「名作」と言われる実写映画でさえ、クライマックスの発砲で「スライドが動かなかったり」「薬莢が出なかったり」はては「シリンダーが動かなかったり」しているのにだ!この銃器描写の精密さが、ルパンのウリとなり、これで多くの少年をガンナッツにした罪深い作品だ。
また、『魔術師と呼ばれた男』では、ワルサーをただ「抜く」だけではない。鮮やかにガンスピンを決めながら抜く。この凝りよう。
また、『脱獄のチャンスは一度』では、ルパンが死んだと思いこんだゆえ、峰不二子が、この銃を両手でかきいだき、めったにそんなことは言えない、、衝撃的な愛の告白をしている!そして、彼女が両手で愛しそうに抱え込んでいた恋人の形見。決別の思いで、海に投げ捨てられるそれは、やはり「ワルサーP38」でしかありえない!
そして、ある時は、モーターボートでラブアフェアを楽しむルパン。しなだれかかった不二子。はたして、その右手に握られていたのは。
「ワルサーP38、素晴らしいフィーリングね。」
まるで、芸術品でも眺めるように、手の先でもてあそんだのが、このP38なのである。そして「おぅ!ぶっぱなすぞ!」と冗談でつきつけ、ルパンが「よしなよ。オモチャじゃないんだぜ!」と慌てて止める。これが、見ている第三者にとっては退屈な、いや人にとっては嫉妬の炎しか、わかない「カップルのいちゃつき」に、山椒のような心地よい緊張感を与えている。
少々1stシリーズに寄りすぎてしまった気がしなくもない。しかし、「ルパン三世には『車』なんてものは出てきません。出るのは『ポルシェ』とか『ベンツ』とか、実在するものです。」と言い放った、スタッフの言葉通り。それまで「なんか車の形をしてればいい。」「銃の形をしてればいい。」とばかりに適当に描かれていたガジェットが、ちゃんと実在する形になったこのリアリティ。そのターニングポイントとなったのは、やはり『ルパン三世』だった。
そして、ファーストルパンでは、ルパンがつけるものはベンツ、そしてワルサーと、ドイツ製品へのこだわりが見られる。特に、当時最新鋭だったことに加え、ルパンの相棒にふさわしかった、一度見たら目に焼き付くワルサーP38。ただ、殺人の道具としては美しすぎるこの銃を選んだスタッフの眼力は間違いない。完璧な殺人道具にして、口説きの道具にも使える甘いシルエット。まさに「男の美学」と呼ぶにふさわしい。これがベレッタM92F系でも、ここまで芸達者なことはできまい。
そんなワルサーだが、次元に言わせると「お前の女の好みと同じ、癖がある銃だ」というのもご愛嬌。コブラのサイコガンなみに、ワルサーP38はルパン三世を的確に表すアイコンだ。
ガスガンとしては、やはりマルゼンのワルサーP38がダントツでおすすめ。というのが、ワルサー社から提供された実銃の図面を元に起こされたディティールは、まさにモデルガン、いや実銃そのもの。しかも、実射性能も素晴らしい。特に、そこまでディティールにこだわると、耐久力に難が出てくる。しかし、マルゼンのP38は比較的かなりタフだ。
まさに、WW2を生き抜いた歴史的名銃が、21世紀の最新の心臓で蘇った!狙いにくい一時代前のサイトは、愛と根性でカバーしたまえ!
ただ、戦中の刻印を再現したミリタリーモデルしかないのは少し寂しい。とはいえ、シルバーモデル。そして、本物と同じく、使い込めば地の銀色が浮かび出てくるブラックメッキモデル。と、塗装にバリエーションかあるのは嬉しい。
と、「ルパンのP38」が大活躍する話を辿ってみた。しかし、次元とは対照的に、本格的なガンファイトシーンが、結構少なめだということに気づく。まあ、そりゃそうだろう。ルパン三世は、『ビバリーヒルズコップ』の如し。最大の武器は、達者な口だ。「血を見る殺し屋とタコは大嫌い」とは本人の弁。だから、そう銃器も使わないのだろう。
出てきても、例えばスライド後部からびっくり箱のおもちゃみたいなパンチンググローブが出てくる。実はカメラだった。羽をつけて無理やりやジコン飛行機にされた。など、おもしろガジェットにされてしまうことも少なくない。だけど、その一方で、劇場版『DEAD OR ALIVE』のように、本格的なガンファイトもやれる。劇中で、ルパンが逃げながらマガジンチェンジをする。その描写が細かくされてるだけで、「おお、銃に命が蘇った。」とか喜んでしまったものだ。
さあ、新TVシリーズを見直しつつ、また次のTVスペシャル、TVシリーズを待とうではありませんか。