セクシーモンスター、ベレッタM93R

もしあなたがガンマニアなら、自らのガン・クロニクルの中に、「これだ!」という名銃があるはず。そう、あの日見たスクリーンで、漫画で、輝いていたあの主役の手に握られていた、燦然と輝くあの銘銃。それは、まごうことなき正義のあかしか、力の象徴か。その洗礼の中に、強烈な印象を残した銃。ベレッタM93Rは、あなたの心に残っているだろうか?

ベレッタM93Rという銃は、特別な銃だ。何せ、「マシンガンをピストルサイズにダウンサイジングする」という「マシンピストル」というコンセプトから特殊だが、まずそのデザイン。

『ダイ・ハード』『男たちの挽歌』『リーサルウェポン』を皮切りに、すっかり銀幕オートマティックの顔と化した、ベレッタM92F。


そのM92F譲りの、スライドの上前部が切り取られたおなじみの「顔」に、イタリアンデザインの誉ともいえる流麗なデザイン。それをさらに「サブマシンガンにしたらよいのでは?」とした面構えは、まさに野生の豹のようなワイルドさ。
9mmパラベラム弾を20+1発装填するロングマガジン。強烈な反動に耐性を付けるため、M92Fよりもさらに角ばったスライド。銃身下にそなえられた、折りたたみ可能なフォアグリップは、牙のような印象を与える。連射時にここを伸ばし、支える。

そして、高い命中精度を保つため、延長されたバレルは、射撃時の安定性を確保。そして、マズルからのガスを上方に逃がすマグナポートで、反動を抑える。
まさに、「ベレッタ」のDNAを受け継ぐ、優雅なスタイル。マシンガンの凶暴さを、ぎゅっとハンドガンサイズに詰め込んだ魅力がある。機能美がそのままデザインに生かされている、芸術品だ。これに匹敵する美しさを持つのは、もう、モーゼルM712しかないのではないだろうか。

しかも、実銃はフルオート機構を廃止している。というのは、モーゼルM712でも、フルオートでぶっ放すにはストックがないとコントロールが効かない。そのために、M93Rには、一回トリガーを引けば三発連射される、三点バーストなる機構が積まれている。これで、よりコントローラブルになり、相手の急所を正確に狙い撃てる。

そう、M93Rという銃は、「要人警護のためのテロリスト排除」を念頭に置いて作られた、恐ろしい銃。それは、もしもフルオートでぶっ放せば、一分2000発という、マシンガンの中でもきわめて高い回転性能を誇ることにも表れている。
相手の牽制や、腕なんかに怪我を負わせ戦闘力を喪失させる。それが普通のサブマシンガンの役割だが、こいつは、正確に敵を殺すため、高いコントロール性能で、確実に一撃で叩き込む。まさに必殺兵器だ。

そして、実銃もすさまじいが、M93Rという銃は、古参ガンマニアにとって忘れられない銃だろう。

黎明期から日本のトイガン界を引っ張ってきた、今は無きトイガンメーカー。伝説のMGCが、エアソフトガンとして出した第一作がこれ。当時、エアガンの台頭にモデルガンは押され気味になっていた。しかし、MGCは「どうせ作るなら、ガンファンの度肝を抜くようなものを」と、計画を練りに練っていた。そして、ついにMGCのM93Rが出た。
この銃は、それまでのエアソフトガンを一瞬で時代遅れにしてしまった。というのが、これ以前のエアソフトガンは、軒並みコッキング式だった。
いちいちポンプのばねを手動で起こして撃たなければならない。

当時、「エアガンはガキのおもちゃくさい。」という感覚があったのだが、このめんどくさいエアコックにも一要因があった。「トリガー1発で次の激発準備が整う」それが、モデルガン派がエアソフトガンを一歩下に見ていた要因でもある。また、「トリガーを引くだけで連射ができたらなぁ。」というのも、エアソフトガン派の夢だった。
そして、その夢を一気にこの銃がかなえてしまった。
初のフロンガス、あるいは自転車の空気入れを使って空気をガスタンクに貯蔵。面倒なエアコックから解放され、トリガーのみの連射が効く。
しかも、外見もモデルガン並にリアル。買ってきてすぐにゲームで使える性能の高さ。これ一つで、今で言うスライド固定ガスガンのすべてを作り上げてしまった。

と言うのが、軒並みほかのメーカーも、右へ倣えしてガスガンを作り始めたのだ。しかも、映画『パリ警視J』とタイアップ。

説明書にこの映画のことに触れてみたり、前売り券で宣伝をしてみたり。ラストでM93Rを敵から奪って使っただけなのに、すっかり『パリ警視J』=M93Rのイメージが定着。そして、MGCのこれも爆発的なヒットを得た。
何せ、その後もブローバックとして、MGCの血統を受け継ぐメーカー、タイトーから発売。そして、その後継者であるKSCの手によって、少しずつ改良を加えられて、同社のロングセラーになっている。

最新型の『M93RⅡ』は、セミオート・三点バーストに加え、フルオートまで完備。しかも、旧作が連射し続けると明らかに息が上がってしまったのも、こいつではシステム7という最新鋭エンジンで改善されている。
マガジンも49連発から、同社のM9のマガジンまで、幅広く流用できる。もちろん別売りで、折り畳み式ストックも完備されている至れり尽くせりさ!KSCの看板。いや、「エアソフトガンのマシンピストル」を代表する名機!この「腕が痛くなる」ほどの強烈な連射!
マシンピストル初心者にもフリークにも、是非味わってもらいたい。そして、日本第一号のガスガンとなったM93Rの歴史の重みを感じてもらいたい。

当時のガキどもに「ベレッタM93R」などという、マニアックな銃。このセクシーモンスターを幼い脳裏に叩き込んだのが、小林たつよしのマンガ『リトルコップ』だろう。幼年漫画界のジャンプ、「コロコロコミック」。『リトルコップ』というタイトルのその漫画は、明らかに他のマンガとは一線を画していた。

のっけから出てくる少年。中学生ぐらいの、キャップとスカジャンがトレードマークの小僧。そいつが、『太陽にほえろ』は、ヤマさん張りの渋い顔で、刑事がやるように、現場に残った薬莢を拾い、こう言い放った。

「間違いない。これは世界最強の、45ウィルディマグナムです。」

ウィルディ!まさか「幼年誌」で、ウィルディなるマニアックな名を聞くとは思わなかった。

説明しよう!ウィルディ45とは、やれM29じゃ、オートマグの方が強いんじゃ、と、弾薬のパワー競争も華やかな時代に出たマグナム・オート。一説には、当時世界最強の44マグナムをもしのぐハイパワーマグナム、と噂される。しかし!ウィルディなんてのが主役の手ににぎられたのは、チャールズ・ブロンソン主演の『スーパーマグナム』しか記憶にない。

ガンマニアの間でも、知る人ぞ知るニッチガン。そんなのがさらりと冒頭に出てきたのには、子ども心に一抹の不安を。それを皮切りに出てくるわ出てくるわ。
第一話からバレットM82対戦車ライフルでヘリを打ち落とす!映画『タクシードライバー』で出てくる、袖から銃を射出する、いわゆる「スリーブガン」が出てくるわ。弾丸が火薬と一体になった、薬莢が出ないライフルG11が出てくるわ。
「これ、ホントに子ども向け?」とばかりの濃ゆいラインナップ!
今でこそメジャーな「デザートイーグル」も当然出てくる。だが、『リトルコップ』連載時には、まだどこの馬の骨ともつかない珍銃だった。実際、『リトルコップ』でその存在を初めて知った方もおられるだろう。

初期も初期。一番最初の「357マグナム」モデルを出してきたのもツボだ。小さくキャプションで「作動不良多し」と入れられていたのも、いい思い出だ(※デザートイーグルが成功と認められたのは、さらなる改良がくわえられた44マグナムバージョンから。)

また「ガンの各部を覚えてバッチリ決めよう!」とか言って、ちらりと銃の部品解説に触れているのもなんとも。「うんこちんちん」や、「ミニ四駆」が跋扈するコロコロ内で、『アームズ・マガジン』『コンバット・マガジン』が始まったの?と思わせるような異色!
モデルガンブームは遠にすたれ、エアガンブームもまだまだ一部のマニアックな人たちの独占状態だった時代。「どの読者層を狙ってんだよ。」と心の中で突込みつつ、小学時代からガンナッツだった俺のハートをがっちりキャッチ。

しかも、飛び道具はそれだけではない。主人公は『矢車弾』。拳銃携帯も運転免許もある20代前半の「刑事」である。ついでに、愛車はマツダ・コスモスポーツ。この渋さがわかるだろうか?ポルシェとも互角にやりあえるし、ボンドカー真っ青な装備も備えていて、これだけ見たら「エライ渋い刑事」を彷彿させる゛はないかっ!

しかし、外見はただの子どもじゃないか!?暇を見てはラジコンなど、お子様向けホビーに没頭する弾の姿は、どう見ても「子ども」以外の何物でもない。「体は子ども、頭脳はオトナ。」な人の何年も先も行っているパイオニアだ。どう見ても、刑事気取りのコドモが拳銃振り回して大暴れしているようにしか見えない。しかしその奇天烈で破天荒。そして、「これぞ正統アクション刑事もの」と断言できるストーリーで、逆にがっちりと私のハートをキャッチ。
そして、彼の右手に握られていたのは、ベレッタM92Fなどというオモチャではない。対テロ用必殺兵器「ベレッタM93R」だった!

で、これが本当にヒーローのマストアイテムと言うべき格好良さ!ロボコップの愛銃「オートナイン」の後部照準を移植したようなスライド後部のデザイン。そして、銃身を覆うスタビライザーも、オリジナリティが高い、箱型の力強いデザイン。

この銃が、357マグナムをバースト射撃する!9mmのオートで、どうやってリボルバー用357マグナムを発射するんだ!?と、野暮な突込みはなし。というか、それは人類の夢らしく、357SIGなどという弾薬も作られている。
おまけにストックは分解できて、スリングショットにもなるという。弾が切れたり、本体が壊れてどうしようもない時に、便利といういたれりつくせりでなんだかなぁな仕様。

ともかく、レーシングマシンなら4輪よりも6輪。カウンタックならウイング付き。ポルシェならターボがついてなきゃヤダ!なボクらガキ真っ最中。この「最強」な豪華装備が付いたバブルの申し子みたいな銃に、我々ガキンチョが飛びついたのは言うまでもない。
実際、けっこう人気があったらしく、タイアップしたフーセンガム。そして、この「リトルコップカスタム」のトイガンさえ商品化された。なんと、ガスガンと同じ、トリガーを引くだけでセミオート可能!しかも、撃つたびにスライドも動くぞ!

しかし、これは銀玉鉄砲と同じく、内蔵された撃鉄が弾を直接押すタイプ。いわゆる「スプリングガン」と呼ばれる方式。しかも、スライドは動くけど、今の「発射のコンマミリ秒後にスライドが爆発的に下がる。」本格的なブローバックじゃない。引き金と連動したシアなどがスライドを動かす。通称タニオアクションと呼ばれるもの。もちろん、ギミック満載のストックなんぞはついてない。現在のKSCのM93Rガスガンとは比べ物にならない。しかし、「リトルコップカスタム」M93Rが現実に俺の手に!ただそれだけで感動したものだ。少しばかりダウンサイズされて、子どもの手にもしっくりくるところも、ユルくってよかった。

というわけで、ベレッタM93Rという特殊な銃。そして、それを盛り上げた立役者を紹介してきた。しかし、マシンピストルというマニアックさ、しかも「特殊部隊御用達」と言うんだから、知名度は低くなりそうなものだ。しかし、それとは逆に、M93Rという銃が、ガンナッツの間で、ここまで親しみを持たれているのは、日本が唯一ではないだろうか?
ゲームユースにも、コレクションとしても楽しめるM93R。ハンドガンともマシンガンとも一味違う「マシンピストル」の醍醐味を、是非これで堪能してほしい。

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