「寡黙なガンマン」と饒舌なモーゼル。『殺しが静かにやってくる』

幻のカルト映画、『殺しが静かにやってくる』がついに登場!

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マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション

その中の一つとして、『殺しが静かにやってくる』がある。マニア垂涎、いや、ウエスタンの枠を超えてマニアの間で伝説化されている映画だ。

まず、監督がセルジオ・コルブッチ。西部劇のフォーマットを作った『続・荒野の用心棒』を生み出した伝説。

何せ、これのおかげで西部劇は埃、ドロ感あふれる荒野。そして映画館に「ジャンゴ」なるガンマンが雨後のタケノコのごとく出現した。そして、かの作品を見た方は、本作品を見て、「あっ!」と驚かれるだろう。

のっけから一面の銀世界で始まる『殺しは静かにやってくる』ここから、もうすでにこの作品が西部劇のフォーマットを破っている。血と埃。渇いた風が吹く荒野。ではなく、のっけから詩情があふれている。
そして、命は奪わず、「親指」=「敵のガンマン生命」だけを奪う主人公、サイレンスの美学が描かれるのが美しい。

主人公は寡黙。いや、それどころか一言もしゃべらない。あまりのだんまりに耐えかねたヒロインが詰め寄ると、サイレンスは怒りの表情を見せ、首を見せる。そこには、幼少のころ、自分たちの犯行への口封じとして、声帯を切られた跡がなまなましく!「ウエスタンのガンマン」=「無口である」ということをうまく逆手にとった演出!まさに、観客の予想を上回る裏切り!

そして、時代の移り変わり。いままで「自由と開拓」の象徴として描かれていたガンマンが、「そんな野蛮な真似はゆるされない」とばかりに、「ならず者」のレッテルをはられ、権力に駆られていく。この話の悪役、ネロも、「もとガンマンを狩る」賞金稼ぎ。判事の傀儡となって、邪魔なガンマンたちを次々と消していく。この根底に流れる、「刀を取り上げられた明治時代のサムライ」のような時代の変化が根底が、悲壮なBGMになって、この物語を奏でる。

そして、ネロはカネに頼り、サイレンスは「信条」のために立ち上がった。どちらも正しくて悲しい。そして、サイレンスの幼少時代をめぐる悪玉たちとの因縁。まさに、時代の狂気。そして、ガンマンと言うサガが繰り返されるを得ない殺戮劇という因果。

現在、アニメなどで「鬱エンド」が流行りなようだが、ご冗談を!1968年で、もうそれは予言されていた。さらには、西部劇にとどめを刺したといわれる『ワイルド・バンチ』そして、自由と一枚裏の無軌道さの果てに、激しく美しい滅びの美学を描く、アメリカン・ニューシネマ・・・例えば、『俺達に明日は無い』・・・など、大きなムーブメントにつながる。その目覚めが、本作品なのではないだろうか?

また、ハッピーエンドバージョンもおまけについてくるのがうれしい。
当時、あまりにもバットエンドに不評だったから。あるいは、これが最初に用意されている終わり方だとか、いろいろ諸説芬々。しかし、これもまた、スカッとするガンさばきと、小粋な台詞で、コンパクトにまとめられていてナイス。ここまで含めて、『殺しが静かにやってくる』を収録した朝日新聞社に、足を向けては寝られない。

また、作品自体も異色なら、主人公・サイレンスの使っている銃も異色。モーゼル・ミリタリーだ。西部劇といえば、シングル・アクション・アーミー。しかしこれはまったく違う。オートである!しかも、二列で弾が入るダブルカラム方式を取っている。六連発の比じゃない!これが、「しゃべれないガンマン」サイレンスの異色さに一役買っている。
頭からしっぽまで、斬新の一言!ラストシーン。ネロがビジネスのようにサイレンスを片付けた後、それでも彼の銃をとったのはなぜか?まるで、親友の形見のように、愛しそうに、哀しそうに取り上げたのはなぜか?知りたかったら、実物を持つしかない。といっても、日本なのでトイガンだけど。

そして、ジャパニーズ・モーゼルと言えば、マルシンのものが決定版。特にモデルガン。ブローバックは当たり前。単発と連射の切り替えが効く。実物と同じように、グリップ上部のレバーを下げてからの分解。そこから見せる機関部。よくここまで考えられたと感慨に浸れる知恵の輪のようなメカニズムもばっちり再現。銃身が少し下がるショートリコイルまで行う名作。当然、当時のガンマニアからもろ手上げて歓迎された。

加えて、今年の頭に再販されたということからでも、その人気の高さがうかがえる。モデルガンが下火になっている現在なのに!この息の長さは実力の証。また、近年になって、モーゼルのブローバック・ガスガンまで出てきている。モデルガン譲りの外観は、リボルバーとオートの中間のようななまめかしいモーゼルのフォルムを再現してある。

銃身が太いけど、それはそれで頼もしさを感じる。ショートマガジンは、一、二発撃っただけで息切れするけど、ロングマガジンさえデフォルトで付いてくるのがうれしい。
引き金の引き切り方で、フル・セミオートが不安定になるのは、コツさえつかめたら自由自在に操ることができる。何より、ボルトを引いて初弾を送りこむ。引き金を引いたら、小気味よい反動とともに、ボルトが後退する。

この操作、そしてマシンガンのように響く空撃ちを、ガスで手軽に楽しめることがうれしい。今までのガスガンで、ここまで再現されているものはなかった。もちろん、劇中のサイレンス仕様と同じく、モデルガン兼用のストックが使える。このストック、実物同様に、後ろのふたを開けて本体を入れることができるホルスター仕様だ。
あまたあるモーゼル・ミリタリーの醍醐味が、この着脱式ストック。本体とともに、ぜひ手に入れたいオプションだ。特に『殺しが静かにやってくる』ファンならぜひとも!

それにしても、今回紹介した雑誌『マカロニ・ウエスタン傑作映画DVDコレクション』は、気合の入りっぷりが違う。何せ、同じくウエスタンのシュールリアリズムと呼ばれるカルト作品『情無用のジャンゴ』を用意したり、第一回目から、「これがなければマカロニ自体が語れない!」『荒野の用心棒』を用意したり。しかも、イーストウッドの声が山田康雄というこだわりっぷり。

今回の『殺しが静かにやってくる』も、本気で求めるならこの二倍の値段は払わなけりゃいけない。そもそも手に入りづらい!まさに「マカロニ・ウエスタン50周年記念」にふさわしい!未見の方は、せめて一巻だけでも手に入れよう!

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