45オートの伝道師。探偵マイク・ハマーと、その周辺。

100パーセント純なアメリカ生まれのハードボイルド。タフガイの主人公に欠かせないのは、美女。そして、何より確かになる「カノジョ」

コルト・45オートだ。

そして、「ハードボイルド」=「45オート」を決定づけたのが、『マイク・ハマー』

今回は、彼と、その後継者の中でも、「45オート」が魅力的に演出されているものを取り上げてみよう。

読めば、手元に45オートを置いておきたくなること、請け合いだ。

世界で初めて「ハートボイルド」を世に問うた「ダシール・ハメット」



その作風を受け継ぐものは、大体二つの流派に分かれる。

一つは、レイモンド・チャンドラーが生み出したヒーロー「フィリップ・マーロウ」派。

もう一つが、ミッキー・スピレインが生み出したヒーロー「マイク・ハマー」派だ。

マーロウが、「都会を行く現代によみがえった孤高の騎士」。つまり、「紳士的で詩情派」で行くなら、ハマーは「あふれだすバイオレンス特急」

むせかえるような濃密なバイオレンス描写。そして、ヒーローの周りには美女が!

この容赦ないストレートな表現は、お上品な文壇からは無視されたが、大衆はそれを渇望した。

「俺が法律だ!」とばかりに、悪党に容赦なく鉄拳、そして鉛弾をぶち込んでいく身も蓋もないバイオレンス。これは、当時かつてなかった新境地だった。

「ハードボイルド」=「タフガイ。そして暴力」の図式は、ここで出来上がる。

日本で最もストレートな後継者は「大藪春彦」だし、やはりハードボイルドと言えば「推理がわりに暴力をふるう」。

洗練されても、例えば「あぶない刑事」から派手なドンパチやらカーチェイスやらを取ってしまったら、気の抜けたビール以下になってしまうだろう。

そして、ハマーが、命を預けられる相棒として選んだのは、コルト45オート。

これまでハバを利かせていた38口径などというちゃちなものではない。38口径では歯が立たない敵のために作られた「一発で敵を沈める」銃だ。

まさに「大砲」。

「力こそ正義」ではないが、やはり腕っぷし自慢の探偵には軟弱な銃は似合わない。

『ダーティハリー』シリーズの、44マグナムの宣伝度を思い出してほしい。

果たして、これで、「ハードボイルド」=「大口径コルト45オート」の図式が出来上がった。

加えて、そのような「アメリカン・ハードボイルド」を、日本でも再現しようとしたのが、矢沢俊彦著の『マンハッタン・オブ』(光文社文庫)シリーズだ。

「和製」なので、どうしても「再現度」は完璧ではないだろう、と思ってしまいがちだが、それを逆手にとって、翻訳ものにつきものな「訳文の固さ」を再現している。

雰囲気は抜群だ。

また、短編の連作なので、気軽に付き合える。時間が無い人にもぴったりだ。

主人公「名無しのマンハッタン探偵」は、マイク・ハマーとは逆の性格。

「俺が法律だ!」とやたらデカイ面をする気は毛頭ない。ピストルをやたらとぶっ放すわけでもなく、黙々と足を使って証拠を集め、推理する。

だけど、どんな困難をもワイズラックで笑い飛ばしながら、めげずに真実にたどり着くのは、まぎれもなく「ハードボイルド」だ。

どちからかというと、フィリップ・マーロウに似ている彼だが、それでも性格がまるで違う二人が頼る銃は、45オート。

「ハードボイルドは、男のハーレクインだ。」と述べる人もいるが、やはり45オートにもフェテシズムを感じる。

冷たく固く、そしてデカイ。

ただ単に「銃」というだけではなく、彼らは様々な「物語」を持つキャラクターだ。

それは主人公の銃の付き合いだったり、その銃が醸し出す「物語」だったり。

『マイク・ハマー』シリーズ。そして、和製ハードボイルド『マンハッタン・オブ』シリーズ

「ハードボイルド」のエキスをぎゅっと詰めたような作品なので、読むだけでもその醍醐味が十二分に楽しめる。

そして、読み終わったら、きっとコルト45オートが欲しくなる逸品だ。

幸いなことに、コルト45オートのトイガンはは多いくのメーカーがラインアップしている。この作品で味わえる、撃鉄を起こす。マガジンを入れる、スライドに弾丸を送り込む。あのひんやりとした興奮を、リアルでも味わっていただきたい。