キュートな相棒、コルト25オート

トイガン界で、最近めったに見かけなくなったもの。
リボルバー、特にカート式のものなんか、顕著なんだけど、それより上の絶滅危惧種として「ポケットオート」が挙げられるだろう。

「ポケットオート」

世界一有名なスパイ、ジェームズボンドの愛銃、ワルサーPPK/Sなどに代表される中型オートよりもまだ小さい。小型リボルバーの代名詞、S&WM36チーフスペシャルと比べても、大人と子どもの対格差ぐらいある。

文字通り「ポケットで携帯しても邪魔にならない」小型さ。手のひらにすっぽり入る小ささは、文字通り「おもちゃか!?」と思うほど。「これで殺傷能力あるの?」と疑ってしまうほどの小ささ。

実際、小口径がメインなので、「なんか泥酔のケンカで撃たれたみたいだけど、次の日顔を見たら、顔面で弾が止まっていた」ぐらい、威力は低い。

さらに言えば「小型すぎるので、暗殺にで使われたら大変」と言うことで、アメリカでは、この超小型サイズの拳銃の輸入は禁止されている。

しかし、急所を撃ちぬけば恐ろしいほどの殺傷能力があるのは当然。
さらに、撃った音も小さく、風船が破裂したか、エンジンのバックファイヤ音と間違えるほど目立たない。サイレンサーを付ければ、ほとんど音はしない。

暗殺者の手にかかれば、これほど恐ろしい武器もないだろう。

キュートだけど危険な小悪魔的魅力を詰め込んだポケットオート。
その、代名詞として「コルト25オート」がある。

これを現役でいまだに出し続けているメーカーがある。
トイガン界の老舗中の老舗、マルシンだ。

「コルト25オート」と呼ばれるものは、二つの型がある。

一つは、撃鉄が本体に内蔵され、マガジンをグリップ下部の留め金で止めるタイプ。「コルト・ベスト・ポケット」だ。

護身用の傑作中型拳銃、コルト32オートを切り詰めてさらに小型化したような銃で、小さいのに「グリップを握りこまないと撃てない」グリップセフティまで完備!
撃鉄がないということは、ポケットから抜いて撃つ際に、引っかからないということで、これもコルト社の大ヒットの一つとなった。

『パタリロ!』で、タマネギたちが愛用しているのが有名だ。

実は江戸川乱歩でおなじみ『少年探偵団』のメイン銃でもある。

リボルバーと比べると、モダンでスタイリッシュ。なおかつ「少年」の手にふさわしい名銃ではないか!
マルシンは、これをガスガンとして製品化。

スライドさえ動かないけど、逆に言えば「ブローバック」のガスパワーを発射に回せるという、安定した作動が見込まれているということ。
レプリカブランド時代から、サイレンサー付きモデル。
今ではノーマルに加え、木製グリップが付いた、表面仕上げにこだわったモデルが現役で出ている。
この息の長さが、この銃の人気を物語っている。

そして、もう一つの「コルト25オート」
それが「ジュニア・コルト」

本家はスペインの名門ガンメーカー、アストラで「アストラ・カブ」として生産されたものを、コルトが引き受ける形でパテント生産。
ちょうど生産が終わった、前述の「コルト・ベスト・ポケット」の後を受け継ぐような形で登場した。
撃鉄が露出しているタイプなので、今「撃鉄が上がっていて危険」なのかどうか一発で確認できる。
セフティ位置も、ベスト・ポケットが銃の後ろについているのに対し、これはグリップ前部に来ている。
また、マガジンリリースも、ボタン方式となって、グリップ下部についている。
ベスト・ポケットとは、別銃と言っていいほど、けれんみあふれる銃になっている。

マルシンは、これをモデルガンとしてリリースしている。
しっかりと、空撃ちの衝撃を和らげる機構がついた「ダミーカートモデル」
最近は、こればかりしか手に入らなくって、「パンパン」やりたい人には今一つだったけど、近年、発火モデルが再リリースされた!
強化樹脂により、バレルが強化されているのがイイ!
鋼鉄製ではなく、プラスチックで製造されなければならない、しかも、大人の手たと小指が一本あまるグリッピングになる小ささだ。
当然、耐久力も本物とは比べようにならず、バレルが割れるのは避けられない。
そこへ今回の改良! かゆいところに手が届く! さすがマルシン。

驚きなのが、この小ささにも関わらず、特徴的なセフティ・マガジンリリースボタンに加え、マガジンセフティもしっかり作動すること。
通常の銃とは違い、90度回転させて使うセフティ。両手を離して持ち替えないとマガジン交換がしづらい。など、この銃の「味」を完全再現!
あばたもえくぼ、というやつで、いつの間にかこれも愛しく思えてくる。

加えて、作動が比較的確実!
こんな小さなサイズだから、「発火性能はおまけ」として見ていたのだが、なかなかどうして。
こんな小さなサイズから、ポンポンと薬莢が排出されるのは、まさに魔法!
シルバーモデル・ヘビーウェイトモデル。果ては安価な組み立てキットまで、バリエーションが各種そろっているのもうれしい。

さすが『ガンスミスキャッツ』のヒロイン、ラリーをして「この銃を枕の下に置いておかなきゃ寝られない」と言わしめるほど、キュートさにあふれた銃。

しかも、メインウェポンでトレードマークなCZ75ファーストが使えないときは、これがかなりモノを言っている!
君は、見たか!? スリーブガンとして、袖の下に隠されている25オート。
それが、映画『タクシードライバー』のように、一瞬で袖口に射出される。
このカッコよさ!

いまやすっかり鳴りを潜めてしまった、「ポケットオート」
大型で、ポリマーフレーム全盛の今だから、握りしめてほしい!
手のひらでもてあそべる「サイズ」しかも本格派となれば、男の手遊びにもってこいな一丁だ!


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