世界最強のシックスガン S&W M500
30オーバー、もしくは40前後の世代。
その時代直撃な「刑事」銃と言えば?
45オート?ベレッタ?いや、そんな豆鉄砲じゃない。
男だったら「マグナム」だろう、もちろん「世界最強」の。
というわけで、『ダーティーハリー』のヒットを皮切りに、雨後のタケノコのようにマグナム片手の名物刑事が現れた。
『マッドマックス』シリーズのマックスが!
そして、いまだに根強い人気を誇る『ニューヨーク1997』『エスケープ・フロム・LA』シリーズのスネーク・ブリスキン。
『ドーベルマン刑事』では、シングルアクションリボルバーのブラックホーク。
それだけでは飽き足らず、『西部警察』のオキ刑事。『太陽にほえろ』のブルース刑事が、PPCカスタムなるモデルを使用!
アメリカのマニアックなPPCカスタムなどというシロモノが、ここまで流行ったのも日本だけだ。
しかし、今翻って見て、マグナムと言えば?ごつくてでかい、金属のサメみたいなデザートイーグルばかり、氾濫している。
あえてい言ってしまえば、リボルバーなんてのは地味。
撃つたびに特大薬莢が「ガバリ」とばかりに飛び出すオートの方が最近はウケるのだろう。
おまけに、50AE弾を使うデザートイーグルが「世界最強の威力を誇る」となってしまい、すっかりオートマチック派の勝利だ。
しかし、それに「待った!」をかけたのが、S&W社。M500を引っ提げて登場。
S&W=リボルバー
我々リボルバー好きのロマンと夢を実現せんばかりに、登場したM500。再び「世界最強」の座につかん!とばかりに、使用する弾はM500S&Wマグナム。
44マグナムでさえ「小ぶりのライフル弾」といった感じなのに、M500マグナム弾は、ライフル弾と言っても差し支えないでかさ。威力の方も、44マグナムの約三倍、というから、まさしくライフルだ。
あまりにも威力、そしてその反動のきつさのため、銃本体にかかる負担を減らすために、五連発となっている。普通リボルバーは6連発だけど、その点でも、この銃の「強力さ」をうたっている。
弾を込めるシリンダーもまた、ダックスフンドのように延長。
これが新規に設計されたXフレーム。44マグナムのM29どころではない、破格の大きさを誇る。
「拳銃」というカテゴリに入るか入らないかのボーダー。しかし、グリップは小ぶりのKフレームサイズを使っているので、万人に握りやすい。
ハイパワーな弾薬に対応するように、当然銃身は長く、8インチ以上や10インチ以上がデフォルト。
もちろん、4インチやスナブノーズ的なものも売られている。
しかし、銃身の長さと、反動のきつさは反比例する。
チーフスペシャルは38口径なのに、反動はマグナム。
豆鉄砲と言われる38スペシャルでさえ、このありさまなの。わざわざ「世界最強ですんで、下手に撃つとけがしない保証は致しませんよ。」とさえ注意書きされたマグナムをわざわざ短銃身で撃つ勇気はあるだろうか。
加えて、銃身先端に加えられたガス排出用の穴。コンペンセイターが何ともカスタムされたデラックスさを醸し出している。
もともと「高品質」が売りなS&Wの銃。その例にもれず、「世界最強」に挑む気合がひしひしと漂う。
実際、社運を賭けたこのマグナム。規格外のでかさが受けて、大ヒットしたと聞く。
ただ、最初に2,3発撃って、あとはコレクターズアイテムになっている場合が多いらしい。
宇宙海賊コブラではないけど「並のものでは耐えられない」
「安易に売った場合の射手の安全は保障できない」と警告されているM500。
しかし、「無反動」なエアソフトガンならそんなことまったく気にせず、撃てるのがありがたい。
S&W M500 のエアソフトガン
これをリリースしているメーカーは、「リボルバーならペガサスシステム」今乗りに乗っているタナカだ。
8 3/8インチというデフォルトから、4インチ。スナブノーズ。
S&W M500 8 3/8inch ステンレス・ ジュピター・フィニッシュ Ver.2
S&W M500 3inch + 1 ステンレス Version2
S&W M500 ES 2 3/4inch ステンレス Version2
果てはS&W社カスタム部門が手掛けたカスタム、パフォーマンスセンターさえ用意してあるのがありがたい。
特に、パフォーマンスセンターモデル。
S&W M500 パフォーマンスセンター | TANAKA WORKS
カスタムされた「日本刀」のようなシャープなラインを持つ銃身には、もちろんコンペンセイターが刻まれ、さらにはスコープなどのアクセサリーをつけるためのレールさえ用意されている至れり尽くせりさ。
同社も、チーフスペシャル、そして44マグナムにおいて、この「パフォーマンスセンター」モデルを用意してくれたのだが、このモデルも、手軽に「本気出した」カスタマイズリボルバーの迫力が味わえるモデル。
デフォルトでは味わえない、さらに洗練された現代のリボルバーカスタムをリリースしてるところなんて、あとマルシンぐらいしかございませんぜ!
ぜひ手に取ってほしい逸品だ。
S&W M500 とヒーローと
このように、M500は確かにドル箱となった。
しかし、往年のヒーローのように、「44マグナムシンドローム」で世界を熱狂させるには至らなかった。
規格外のこのでかさ、まさに中二病の夢をかなえた「ぼくのかんがえたさいきょうのけんじゅう」なのだが、M500とペアになって出てくる、ヒーローの名をあげられるだろうか?
確かに、『バイオハザード』シリーズなどでも最強の隠し武器として出てくる。ほかにもぽつりぽつりと出てきているが、M29なら「ハリー・キャラハン刑事」と、枕詞になるくらいに刷り込まれたペアがいない。
となると、やはり今の世の中、そのようなヒーローの方がいなくなっているのかもしれない。
今のご時世、マシンガンや多弾数オートが有利。
「撃ちまくって相手をくぎ付け。そして当たればなおいい。」
そんな世の中で、六連発が主役になるのは難しい。
ましてや、M500は五連発。しかし。しかしだ。
「リアリティ」というちっぽけな枠にがんじがらめにされ、「豪快なヒーロー」というのが出にくくなっているのは遺憾だ。
ハリー・キャラハンがもろ手を持って迎えられたのは、西部開拓時代の古き良きガンマンが、現代によみがえったからだ。
だからこそ、そのアイコンは「リボルバー」。
それも、「現代に合わせた」M29が必要だった。
そろそろ「六連発にすべてをかける」号砲一発のカウボーイが出てきてもいいのではないか?
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