ミニマムな暴れん坊『イングラムM10、M11』

80年代。筋肉の鎧に身をまとい、圧倒的火力で敵を葬り去るヒーローが百花繚乱だった。
彼らの手に握られるのは、「片手で撃つことは不可能。」巨大なM60。ウージーサブマシンガン。そして、最小でもイングラムと、派手な花火を上げる火器満載だった。

その中でも、初めて見た方は、巨大なマシンガンぐらいインパクトがあったのではないだろうか。
ちっちゃな最終兵器。イングラムシリーズについて、取り上げる。

イングラムM10は、ゴードン・イングラムによって1970年に作られたサブマシンガンである。などという能書きはよそう。

見るべきはこのコンパクトさ。
全長30センチに満たないこのボディ。マシンガンというよりも、マシンピストルと言った方がいい。実際に、これをショルダーホルスターで脇に吊る方もいる。

これで、一分に千発以上の弾丸を降らされたら!
まさに、撃たれる方は地獄。持ち手には「もう勝利しか見えない」状態になるのは確実。加えて、アメリカの伝統である45口径をばらまくのである。

もはやアメリカの伝統工芸品と化した、コルト45オートと同じ弾。どんぐりのような巨大な弾。マンストッピングパワーのためだけに作られた鉛を、秒速で撃ち込まれた日には、確実にあの世へ送られる保証付きという奴だ。

後継のMAC11は、.380ACPという、中型拳銃(ワルサーPPKの弾だ)が使われるようになったが、その分だけ連射速度が速くなっているというおまけつき。

そして、そのデザイン。
必要最低限なものだけが残された姿。実際に、拳銃をフルオートにするのは簡単。

  1. 撃鉄を上げ、トリガーを引く。
  2. ボルトが後退して、排莢しつつ再び撃鉄を上げる。

この無限ループを、弾が切れるだけ繰り返せばいい。


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一発一発、撃ったらトリガーとハンマーの連動をブローバックの間だけ切る機構を積んだ、セミオート単発の連射銃より、よっぼど簡単に作れる。
まぁ、イングラムにも単射機能はあるが。

箱にグリップが付いたようなスタイル。確かに一目見たら忘れられないスタイル。もちろん、お世辞にもスタイリッシュとは言えない。むしろ、子どもが「こうさくのじかん」に、ボール箱を組み合わせて作ったおもちゃ銃のような恰好をしている。

同じ「低コスト」を目的とする、マカロフ・トカレフ・AK47と比べると、彼女たちロシアン銃がセクシーに見える。

しかし、この不愛想な感じ。何かに似ていると思わないだろうか?そう、80年代に発表され、瞬く間に世界の、そして銀幕を染め上げてしまったグロックシリーズだ。

かの銃も、初めて見たときは「子どもの落書きのような銃だ。」「プラスチッキーでまるでおもちゃだ。」と言われながら、その性能の確実性と信頼性で、すっかり第一線の戦闘拳銃となった。

イングラム、通称マックも、そんな雰囲気がする。

秒間20発をやるボディは、3キロにも満たない。ピストルに毛が生えたような大きさで、この強烈な反動を受けるのだ。ストックは伸ばせて、肩で銃本体を固定できる。

だけど、そんなことをしても「焼け石に水。」跳ね上がる銃口は、とてもじゃないが改造人間でもないと正確に制御できない。
ウージーなら、その重さとでかさも相まって、制御が楽なのだが。

加えて、ボルトが後退したまま。つまり、薬室が開いている状態から発射される。これをオープンボルトと言う。

普通の自動拳銃でいえば、スライドが下がった時点がデフォ。
引き金を引いて、スライドストップが解かれ、薬室に弾を送り込んで発射!この乱暴極まりなさ!おかげで、フルオート時の命中精度はあって無きがごとく。

しかし、もともとサブマシンガンは、一人で大勢の敵を相手するために作られた。
ということは、弾幕がばらければばらけるほど、広範囲の敵を制圧できる。
一点よりも、面を重視する思想は、ショットガンと似ている。

実際、精度があまり重視されていない時代では、それでも重宝された。
しかし「人質の間を縫って射撃」などというシリアスなケースが起こる、テロ事件の勃発とともに、精度重視なH&K社のサブマシンガンにその地位をとってかわられた。

だけど、単純ゆえの安価、そして丈夫さは、大いにウケて、なおも生産は続いている。
ただ、そのユーザーが「とにかく無差別にばらまけばいい。」「隠し持てるって便利だよね。」犯罪者やテロリストの手にも多数握られているのは、皮肉だが。

というわけで、実際に戦争もの、犯罪ものの物語で、この銃の氾濫を目にすることができる。その先駆けとなったのは『マックQ』だろう。

往年の西部劇大スター。ジョン・ウェインが、刑事役として活躍する本作。『ダーティ・ハリー』のヒットを受けて、本作にかのピックネームが登場した、ともささやかれる。

なるほど、「44マグナム」は「西部劇の骨董品」。ナウなヤングには、都会的なサブマシンガンで、というわけで、彼の手にはイングラムが握られたのだろうか?
しかし「世界最強の拳銃」の前に、イマイチインパクトがなかったのか、ブームは来なかった。

とはいえ、『コマンドー』に『ランボー』
マッチョなヒーローの手に、あるいは敵の手に握られるものは、やはりマックだった。

ここまで読むと、マックをその手に握りたくなってきたのではないだろうか?実際、イングラムシリーズは人気のある銃で、トイガンがまだ「エアを使わない」スプリング発射の時から各社よりリリースされている。

そして現在、エアガンとしてなら、マルイ・マルゼン・東京マルイから各種リリースされている。サバイバルゲームのツールと割り切るなら、マルイの電動ガンのものがおすすめだ。

マルイ製品だから、優等生なのがデフォ。加えて、季節に関係なく安定して動く。本格的な電動ガンとして、マックM10がリリースされている。加えて、さらにうれしいのが、3,980円で、マック11がリリースされていること。

対象年齢10歳以上のお子ちゃまガンだとなめてはいけない。セミ・フルオートがちゃんと切り替えが効く。しかも、ボルトまで連動して動く。マガジン形状がリアルじゃないのは仕方ないが、それにしても「単四電池」四本で動く。

電動ガン購入の際、ネックになる一つが、バッテリーではないのだろうか?ただ、バッテリーを買うだけではない。それに伴って、充電器は買わなきゃいけない。加えて、バッテリー充電だけではなく、放電にも時間と手間がかかる。
しかし、スーパーでも売られている単四電池なら、そういう手間から解放される。とりあえず「イングラム」というものがどういうものか手に取りたい方。おすすめだ。

続けて、「電動では味わえない、爆発的な小気味よい撃ち味が欲しい」という方。ならば、ガスガンだろう。中でも、強いリコイル。頑丈な機構、高性能。何よりもリーズナブルさを考えると、マルゼンのM11がおすすめだ。

また、「銃は火薬と硝煙のにおいがしなきゃダメ」って方には、CAWのモデルガンがおすすめだ。

弾こそ出ないけど、モデルガンブームを牽引し続けたMGC。そのイングラムのリメイク。作動は快調だし、金属カートが「ガガガガッ」とボルトに当たって排出される反動。
そして、あたりに漂う火薬の香りの濃密さ。イングラム好きだけではなくって「場所を取らないコンパクトなモデルガンで、ドバドバ発火させたい」という方にお勧め。

ざっと、今手に入りやすいイングラムを紹介してきたが、いかがだっただろうか。

サバイバルゲームでも、やはりそのコンパクトさと相まって「取り回しやすい」と人気の逸品。実銃の長きにわたるバトルプルーフは伊達ではない。実際、装備がかさばる、というのは、サバイバルゲーマーにとって死活問題。

そこへ行くと、マシンガンなのに、ピストルのように気軽に装備できるこれのなんというありがたさか。「穴」そのものな狙いにくいサイトに、時代を感じつつ、この小さな暴れん坊でフィールドを駆け回る、というのはどうだろうか?


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