『キノの銃』パースエイダー・カノンと西部劇の顔役コルトM1851

『キノの旅』という作品は、ご存知の方も多いだろう。

一説だと、今のライトノベルの流行り「寓話的な異世界物語」のさきがけとも言われる当作品。
820万部も売上を叩き出し、アニメ、ゲーム化もされている電撃文庫のドル箱だ。


まず短編連作、しかもかなり文体は簡潔で読みやすい。とっつきやすい。

『キノの旅』って作品は、主人公のキノが、相棒の言葉を話す自動二輪車「エルメス」と旅をしながら、様々な国を訪れるというあらすじ。

しかし、どこの国にも「戦争」の影がちらつくし、油断していたら身ぐるみ剥がれる物騒な世界だ。
その中で繰り広げられる寓意は、「平和ボケした日本、世界の常識」をちくりと皮肉る。星新一の小粋なショートショート連作を彷彿させる名作。

で、このたび、主人公「キノ」の愛銃「カノン」が、ついにFullCockからリリースされた。

しかし、これが『キノの旅』の枠でとどまることがない、コレクターズアイテムになっている。

「カノン」がラインナップされたFullCockのウォーターガン

映画『ブレードランナー』のブラスターをかたどった「爆水拳銃」。大ヒットしたSFウエスタン『トライガン』の「ヴァッシュの銃」、そしてクラシカルなモーゼルなどなど。



水鉄砲と侮るなかれ。リアリティを追求したFullCockの製品は、マニアのツボを抑えたヒット商品となった。

それまでの人気ある『架空銃』が、数万する上に、無可動なのに対し、こっちはその数十分の一、東京マルイのエアコッキングハンドガン並みの価格で買える。

これを快挙として、何を快挙という!?そして、今回モデルアップされた「キノの銃」だ。

「カノン」のモデル「コルト・ネイビー51」

劇中では、銃器のことは「パースエイダー」と表現される。キノは、オートマチックにライフル、その場に応じて銃器を使い分ける。
その中でも最も活躍している、リボルバー式パースエイダー「カノン」をモデルアップ。

これがバリュー価格を持つのは、ひとえにコルトM1851、いわゆる「コルト・ネイビー51」という銃を再現しているからでもある。

ネイビー51という銃は、西部劇の代名詞、『続・夕日のガンマン』などの西部劇に、ピースメーカーと並んで登場する名優拳銃。

まだ「薬莢」なんてものがない時代の銃だから、シリンダー前から火薬、鉛弾を詰め、激発用のニップルをシリンダー後部にセットする。と、現代の銃器の利便性の根本を問い直す銃。

しかし、趣味という世界では別で、西部劇マニア、リボルバーマニアには喉から手が出るほど欲しい存在。

ノンフルートのシリンダーが、フレーム上方まで突き出すこの存在感。

銃口下のローティングレバーが醸し出す、優雅な迫力は、ピースメーカーより上で「フリントロック」銃のような優雅さを醸し出す。
現実にも、パーカッションリボルバーの代名詞だった本銃は、ドグ・ホリディ。ネッド・ケリーなど、名だたるガンマンが手にした。

加えて、日本でも「井伊直弼」暗殺に使われたのではないか?と囁かれているのがこれ。歴史ある佇まいは、まさに芸術品。実際にそのような扱いで、実銃なら相当のプレミアがつく。

そして、トイガン界でも「プレミア」もの。いま、これをモデルアップしているのは、数えるほどのメーカーしかなく、加えてべらぼうに高い。

しかし、それを三千円強で提供してくれる本作に、ガンマニアの絶賛が集まったのは言うまでもない。

FullCockの方でも、その楽しみはわかっている。

塗装済みの「キノの銃」が、スチールブラック・シルバーニッケル双方でリリースされている。可動部分はトリガーしかないけど、鋼鉄の重さ、冷ややかさを伝える塗装。シリンダーから覗くニップルをセットする部分、ローディングレバーなどは精密に再現されている。

気軽に楽しもうと思うなら、おつりが来るほどの出来だ。

加えて、火薬を入れるフラスコ、弾丸を詰める工具までついた豪華仕様もある。オプションで、収納ケースさえ用意しているところに、FullCockのこの銃にかける情熱が伝わってくる。

パーカッションリボルバー「カノン」を使う理由

蛇足だけど、キノの愛銃。今時パーカッションリボルバーかよ。と思われる方もいるかもしれない。

魔法少女で「魔法で弾数無限大」などというチートを使わず、ちゃんとシリンダー先から火薬と弾丸を込め、シングルアクションの六連発というルールをかたくなに守るキノ。

実際に、マシンガンまで出てくる『キノの旅』の世界。火縄銃とはいかないまでも、銃撃戦でかなり不利なのは目に見えている。

しかし、キノはキノなりの理由があって、この銃を使い続けている。

まず初めに、キノは「旅人」だということ。

野生動物何かを相手にするハンターは、やはり大口径マグナム。それもリボルバーをサイドアームにする場合がある。獣に襲われたとき、ライフル並みの威力が欲しい。そして、それならばオートより作動確実なリボルバーだ。

そして、「旅をしている」ということは、「弾丸が手に入れられない」状況もあるということ。薬莢に包まれた弾薬なんて、少なくとも日本じゃ手に入らない。同様に、移動した先が弾薬とは縁遠い国かもしれないし、森のど真ん中で弾が切れた時に、近くに「弾丸を売ってる雑貨屋」なんてない。

だから、いつでもどこでも「火薬」と弾頭さえあれば再装填が可能な、パーカッションリボルバーを愛用している。

キャラ立ての為にマニア銃を吊っているかと思いきや、これ。ガンマニアの琴線をくすぐる、名設定じゃないですか。

というわけで、『キノの旅』ファンにも、西部劇フリーク。そしてリボルバー好きに胸をはっておすすめできる「キノの銃」。

これまでの現代銃にはない、「銃の進化過程」にあるこの銃。手にとって、歴史を感じて欲しい。



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